2016 Fiscal Year Research-status Report
OFF-ON-OFF蛍光スイッチ原理を持つ蛋白質標識プローブの開発
Project/Area Number |
16K13088
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00444563)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | PYPタグ / OFF-ON-OFF蛍光標識プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の分解は、細胞周期やシグナル伝達の制御において重要な役割を担っている。蛋白質を標識する技術は、蛋白質の分解を生細胞で可視化する有用な手法である。これまでに多くの蛋白質標識技術が開発されてきた。現在最も利用されているものは、蛍光蛋白質であるが、あるタイミングで発現している蛋白質の分解を見るうえで、新たに発現してきた蛋白質と区別がつかないという問題がある。そこで、この問題を解決できると考えられるものが、合成蛍光プローブとタグ蛋白質を用いる手法である。しかしながら、この手法でも、蛋白質分解後も蛍光プローブが蛍光を放ち続けるため、蛋白質の分解をリアルタイムで見ることが困難であった。そこで、本研究では、この問題を解決するため、PYPタグを融合した蛋白質の発現を蛍光強度の増大で検出し、分解を蛍光強度の減少で可視化する新たなOFF-ON-OFF蛍光標識プローブを開発した。 まず、リガンド部位を7-hydroxycoumarin (7-HC)、蛍光色素部位をフルオレセイン、ジニトロベンゼンを消光基とした新規プローブを開発した。蛋白質の発現・分解の検出原理は、次の通りである。プローブは、遊離状態ではフルオレセインとジニトロベンゼンの会合により消光し、標識されるとジニトロベンゼン部分が解離し蛍光性となり、蛋白質分解後にフルオレセインと7-HCの会合により再び消光する。実際に、蛍光測定実験から、PYPタグと結合すると蛍光強度が上昇し、トリプシンを作用させると蛍光強度が抑制された。また、SDS-PAGEの実験から、蛋白質が分解されていることが確認された。以上の結果より、開発したプローブは、蛋白質の発現・分解を検出することのできるOFF-ON-OFF蛍光標識プローブであることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、PYPタグラベル化技術に用いるプローブ開発を行い、特に、蛋白質のラベル化時に蛍光強度が上昇し、蛋白質分解に伴い蛍光強度が低下するプローブを開発することを目的とした。化合物の合成も完了し、実際の蛍光測定実験も実施した。更に、分子設計の段階で予測した通りの、OFF-ON-OFF応答が確認され、当初の目的は概ね達成されているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
試験管レベルで、蛋白質のラベル化に伴う蛍光強度の増大、分解に伴う蛍光強度の減少を示すプローブの開発に成功した。今後は、細胞膜上の蛋白質をラベル化し、その蛋白質のエンドサイトーシス及びリソソームでの分解の可視化を行う。また、プローブの膜透過性を向上させる分子構造の改変を行い、細胞内蛋白質のイメージング及びその蛋白質の分解をイメージングする。更に、プローブに導入した蛍光色素を変更し、マルチカラープローブを開発する。
|
Causes of Carryover |
OFF-ON-OFF蛍光プローブを開発するうえで、分子力学計算を実施したところ、プローブに導入するリンカーがラベル化速度に大きな影響を及ぼすというデータが新たに得られた。このことは、タンパク質のラベル化において極めて大きな発見であり、更なるプローブの開発と検証を実施する必要が生じた。このため、次年度の実験経費が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
プローブの合成試薬及び溶媒に、77,031円を支出する予定である。
|