2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13098
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大神田 淳子 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (50233052)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非構造性たんぱく質 / 蛍光サーマルシフト / 蛍光偏光 / 概日リズム / 転写因子 / 中分子ライブラリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではたんぱく質間相互作用(protein-protein interactions: PPIs)の動的な構造変化を対象とする合成モジュレーターの開発に向けて、非構造性たんぱく質(intrinsically disordered regions or proteins; IDPs)に結合し構造変化を誘起する化合物のライブラリスクリーニングによる発見と利用、翻訳後修飾IDPsに内在性パートナーたんぱく質を共有結合させる分子ツールの設計を検討する。H28年度は、まず大腸菌を用いたリコンビナントCLOCKとBMAL1の発現並びに精製を検討した。発現ベクターはpET29b, pET32bにN末端Trx-tagならびにHis-tagを加えたbHLH, PAS-A, Bドメインのコンストラクトをクローニングしたものを用い、大腸菌を形質転換し、IPTGで発現誘導した。しかし両者ともinclusion bodyとして沈殿したため、種々の条件検討を行った。その結果、沈殿を回収し、8M尿素で処理して変性させたのち、グリセロール存在下でカラム処理し、48時間かけて透析を行うことで、それぞれ1~2mgの目的のたんぱく質を得ることができた。得られたBMAL/CLOCLヘテロダイマーのDNA E2Box配列への結合実験を、EMSAアッセイならびに蛍光偏光滴定実験により評価したところ、解離定数53nMで1:1複合体を形成することが確認した。この解離定数は文献値50 nMとほぼ同等の値であり、どちらかのたんぱく質一方ではDNAに結合しなかったことから、本研究で得たリコンビナントたんぱく質が適切なE-box結合能を有することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、inclusion bodyとして発現するため実験的に扱いにくいIDPsたんぱく質をあえて標的たんぱく質に設定しており、in vitroスクリーニングを実施するに足る量のたんぱく質を如何に供給できるかが鍵となる。H28年度は、概日時計調節転写因子BMAL1/CLOCKの発現と精製および機能の評価を計画し、非構造度の高いTADドメインを除き、ヘテロダイマー形成に重要と考えられるPASドメインを残した部分構造を用いる戦略を立てた。このフラグメントを大腸菌から発現し、最適化した精製条件を適用することでそれぞれmg量を取得、DNAへの結合能を確認することができた。すなわち本研究で最も重要であるたんぱく質供給の目途が立ち、化合物スクリーニングの準備が整った。したがって、研究の進捗状況としては概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、H28年度確立したBMAL/CLOCKの大量発現・精製スキームに沿って、たんぱく質試料を調製したのち、蛍光偏光による1200個の低分子ライブラリのスクリーニングを実施する。H28年度まで利用が可能であったリアルタイムPCR装置についてはアクセス手段を検討するが、まず研究室で日常的に使用が可能な蛍光偏光装置を用いた評価を優先して行う。低分子化合物ライブラリとしては、芳香族系、脂肪族系を中心に調べてゆく。また、H28年度はヘテロダイマーに対して化合物を作用させた場合に化合物の効果が観察されなかったため、BMALもしくはCLCOCKを化合物と作用させたのちに、もう一方のたんぱく質を加えるスキームを採用する。一方、中分子ライブラリの合成に着手する。トリアジンもしくはアミノ安息香酸を母核とした芳香族またはアミノ酸含有ライブラリを200~300個合成し、結合試験に供する。また、BMAL/CLCOCK複合体構造に基づく中分子阻害剤の合理設計を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
H28年度は研究総括者の異動に伴い、いったん研究の撤収と再立ち上げを行う必要が生じたため、当初計画で見込んだよりも執行金額が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度の請求額と合わせて研究遂行に不可欠な有機合成試薬、HPLC溶媒、生化学実験用消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(15 results)