2016 Fiscal Year Research-status Report
シナプス分子のスプライスバリアント特異的な局在を検出するための技術開発
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16K13107
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井端 啓二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30462659)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳分子プロファイリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シナプス分子の局在を解明するために、抗体を作る代わりに、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて抗原(エピトープタグ)そのものを、目的シナプス分子をコードする遺伝子にノックインすることによってシナプス分子局在解析技術を確立する事、さらに、抗体が存在しないNeurexinのスプライスサイト4(30アミノ酸)バリアントの時空間的発現プロファイルを明らかにする事が目的である。平成28年度はProof of principle実験として、既に申請者が所属する研究室で詳細に解析され、HAタグが挿入可能であることが明らかとなっているCbln1、およびタグ導入法の開発に関する報告(Mikuni et al.,Cell, 2016)で示されたArcにHA配列を導入した。マウス受精卵へのガイドRNAとCas9の導入は電気穿孔法にて行った。得られた遺伝子導入受精卵に対して、ゲノム切断後のindelの有無を遺伝子型判定したところ、ガイドRNAの配列によって効率が異なるが、合成RNAはどちらの方法でも効率が高い事が明らかとなった。これらの方法でどちらの遺伝子に対してもHA配列が導入された個体が得られた。続いて免疫染色や蛍光化合物ラベリングで使用可能な既存のエピトープタグであるHA、FLAG、HIS、Myc、およびT7タグをノックインタグの候補とし、エピトープタグの種類と挿入位置を最適化するために各々のタグとタグの位置をin vitro のアッセイ系で検討した。タグを導入したNeurexinが野生型のNeurexinと比較して、Cbln1やNeuroliginとの結合能に影響が無いか、また、HEK細胞を使った人工的シナプス形成アッセイを行い、シナプス形成能に影響が無いかを確認した。その結果、最適なタグとタグの位置が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度はProof of principle実験とノックインするタグの選定、さらにノックイン個体の作製を計画していた。Proof of principle実験とノックインするタグの選定に関しては計画通りに遂行出来たが、ノックイン個体はまだ得られておらず計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックイン個体の作製を早急に行い、平成29年度の計画に記した実験を遂行する。 ノックイン個体のタグ付きNeurexinのスプライスサイト4バリアントをタグに対する抗体や蛍光化合物でラベルして発現と局在の解析をする。Cbln1が多く発現している小脳顆粒細胞の軸索上のシナプスレベルでのNeurexinのスプライスサイト4バリアントの発現と局在を解析する。また、小脳以外でもCbln1はある程度発現しており、Neurexinのスプライスサイト4バリアントが小脳以外の脳部位でどの様な局在をしているかを解析する。さらに発達過程で変化するのか、シナプス可塑性誘導前後にどのように変化するのかも検討する。さらに いくつかの自閉症モデルマウスの解析から、シナプス分子の遺伝子変異が自閉症発生の一因であることが知られている。そこで、自閉症モデルマウスと野生型マウスにおいてNeurexinのスプライスサイト4バリアントの発現パターンを比較することで、Neurexin のスプライシングの違いが自閉症モデルマウスの共通の表現型かどうかを検討する。特にCAPS2やNeuroliginのノックアウトマウスといった直接シナプスの機能に関わる分子をノックアウトしたモデルマウス群と、FMR1やMECP2ノックアウトマウスといった、細胞内で多くの機能を制御している分子をノックアウトしたモデルマウス群での差異を検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の計画に関してノックイン個体の作製以外は順調に遂行出来たため当初の計画より消耗品の購入が少なかった。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はノックイン個体の作製を急ぐと共に平成29年度の実験計画を遂行するために使用する予定である。
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