2016 Fiscal Year Research-status Report
教員・公務員採用適性検査におけるジェンダー質問をめぐる知識社会学的研究
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16K13135
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩本 健良 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (50211066)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 適性検査 / MMPI / 教員採用試験 / 人権 / テスト・スタンダード / LGBT / MINI-124 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献資料と県教育委員会への調査等に基づき、採用試験適性検査におけるMMPI利用の実態と問題点を明らかにした。MMPI(MINI-124を含む)を「テスト・スタンダート」に基づいて分析した結果、大項目6のうち5で、また多数の小項目で、その基準から逸脱がみられた。特に、(1)性的指向や性別違和・宗教など高度のプライバシーに関わる質問が含まれること、(2)第5尺度(Mf尺度、男性性/女性性尺度)の妥当性に大きな問題があることが見いだされた。日本国内の公立学校の教員採用試験においては、2013年度試験(2012年夏実施)以降、MMPI(MINI-124を含む)も、また他種の適性検査も利用が減少していることを明らかにした。それら成果を、日本学術会議公開シンポジウム「教育におけるLGBTIの権利保障」(報告題名「自治体行政の総合的視点から-教員採用試験適性検査の見直しの必要性を中心に」2016/05/21 招待講演)、および国際ジェンダー学会教育部会研究会(報告題名「LGBTと教育の現状と課題~教員採用試験適性検査の問題を中心に~」2016/12/11 招待講演)において報告した。これらの成果は三成美保編『教育とLGBTIをつなぐ――学校・大学の現場から考える』に2017年5月に収録・刊行予定である。 またバンコクで開催されたILGA大会に参加し、日本で知られていない最新の調査手法を用いた ILGA-RIWI Global Attitudes Survey on LGBTI People について報告を聞くとともに資料収集を行った。この調査では本人にネットを介して調査を依頼・実施することでプライバシーを最大限保護するとともに、地域を細かく限定するなどしてサンプリング調査に近づけて精度を高めており、今後日本においても活用が広がるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献資料収集とその分析については、当初の予定通り進捗している。調査については、教員採用試験実施の全自治体に対して郵送調査を予定していたが、社会的影響を考慮してより慎重を期すため、本年度は準備作業として、研究協力者である関連の専門家や人権団体と情報交換を進めるとともに、MMPI利用の一部自治体に対して使用継続か否かの実態を把握するにとどめた。代わりに当初の予定にはなかったが、web調査について、ILGA-RIWI Global Attitudes Survey on LGBTI People が報告されるという情報を入手し、この貴重な機会をとらえて報告を直接聞くとともに資料収集を行い、日本での活用可能性を探っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、海外でのMMPI利用の最新動向にも視点を広げて調査を行う。国内においては繰り越しとなっていた郵送調査を行うとともに、当初の計画に沿って研究を推進する。その成果を学会報告や学術論文として公表していく。
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Causes of Carryover |
当初の計画の郵送調査を翌年に繰り越し、予定を変更して海外の大会に参加した費用を計上したことの差額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度予定で計上した調査予算に含めて使用予定である。
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