2017 Fiscal Year Research-status Report
パラオの親族集団に見られる教育・職業機会を求める女性の相互支援の役割と機能の解明
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16K13137
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
廣瀬 淳一 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 准教授 (20748579)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パラオ / 女性グループ / 相互協力 / 伝統的タイトル / 学歴エリート / 主観的幸福度 / 利他的行動 / 内発的発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
母系社会のパラオは、アメリカの資本主義的な価値観の影響を受けながらも、伝統的な価値観や儀礼を残しながら、双方のバランスを取った発展の道を歩んでいる。本研究ではそれを実現するための重要な機能として、親族集団内の女性グループの「助け合い」に注目し、そのメカニズムの理解を目指した。 当該年度は、前年度の聞き取り調査の分析の結果、女性グループの相互協力の形は厳格なルールは認められなかった。しかし、自分が所属するグループ及び親族集団の力を増す努力が結果的に自分や自分の家族に有利な立場に置くという考え方は共通して見られた。性別を問わず、ある特徴の対象者は、その他の対象者とは対照的な行動様式や価値観を持つと直感を得た。そこで、当該年度はパラオの典型的な価値や行動とともに「主観的幸福度」の指標をとりいれたアンケート調査を追加的に行い、統計ソフト(STATA)で分析した。 その結果、初級公務員程の収入を得て、伝統的な儀礼への参加度が高い男女は主観的幸福度が高く、外国で学位を取得し、民間会社の専門職として高収入を得ている人の中には主観的幸福度が低くでる傾向が認められた。また、氏族集団(クラン)における伝統的タイトルを継承(または見込がある)行動に違いがあり、タイトル継承がなくかつ奨学金などで進学した学歴エリートのなかには伝統的価値や相互協力に無関心又は否定的な考えのものが多い傾向が認められた。 人口2万人に満たない小島嶼国であるパラオに住む限り人間関係から得られる幸福度の存在は無視できない。パラオの発展のためには学歴エリートの貢献が必要で、そのためにも彼らの主観的幸福度を高める政策も重要である。そのためには、これまで当たり前すぎて意識されなかった伝統的な仕組の特徴やメカニズムを伝統に疎かった学歴エリートにも理解できる様式で共有し、各種政策に反映させていく道を探す必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
氏族(クラン)及び親族集団の女性たちの相互協力の形について、親族集団内の地位による協力の内容や協力の対象についてヒアリングを行ったが、役割やルールが明確に決まっているわけではなく、あるいはルールがあるにしても余所者である調査者のアプローチでは形式的な解答しか得られずに、もう一歩踏み込んだ情報が得られなかった。 また、対象者が言葉として表せる形では価値の伝承が行われてない可能性もあり、ヒアリングやアンケート調査に加えて幸福度インデックスを用いたプレ調査(40名弱を対象)を行ったところ、興味深い傾向が見て取れたため、本調査の企画を立てた。 しかし、本調査には幸福度など住民の行動や性格に関する情報を収集することからパラオ調査倫理委員会の審査が必要になった。現地コーディネータの協力を得て既に申請しているが、審査会の開催が幾たびか延期になっており、本調査の実施が滞っている。その間、調査研究の順番を変更し、作業を進めているものの調査実施が遅れている分m全体的な進捗もやや遅れている。 調査の許可が下りれば、その後の分析や作業は順調に進むはずであるので、念入りに準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査及び実験についての許可が下りた後、パラオの現地のスタッフを活用して効率的な調査を実施する。今後、2,3の調査も予定しており、現地スタッフを育成できるような形で調査を進める。 調査の分析に当たっては、実験経済学を専門とする研究者に助言を受けており、その助言を聞きながら進める。 調査結果については、学術誌に論文として投稿する。また、パラオで行われてきた開発援助の事例を踏まえて、パラオ政府側にも報告書等でフィードバックを行う予定である。
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Causes of Carryover |
聞き取り調査の制度を増すために実施するアンケート調査及び経済実験について、その実施を申請中であるがパラオ政府側の審査が遅れている。調査の許可が下り次第、速やかに調査を実施する。現地調査では現地スタッフを追加的に雇用して、アンケートの実施、回収、実験の補助を担わせることで、効率的かつ効果的な調査を行う。
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Research Products
(3 results)