2016 Fiscal Year Research-status Report
戦間期ヨーロッパにおける日本の性文化の受容について
Project/Area Number |
16K13138
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
加藤 めぐみ 都留文科大学, 文学部, 准教授 (70717818)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セクシュアリティ / 国際研究者交流 / 民俗学 / 変態 / 発禁 / 春画 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本研究の目的は、戦間期のヨーロッパ、特に性科学の中心であったドイツ(オーストリア)、イギリスにおいて、日本の文化、なかでも「日本の性文化」がどのように受容されたかを明らかにすることである。 2.そこでまずは研究の起点として1931年に民俗学研究誌Anthropophyteia補遺としてオーストリアで出版された「日本人のセクシュアリティ」に関する二冊の研究書の著者、ウィーン大学のFriedrich S. Kraussと佐藤民雄(紅霞)に着目した。 3.本年度の課題は、Kraussが日本を訪れることもなく『日本の性生活』を執筆した際の資料をどのように入手したか、また佐藤民雄とどのようなかたちで連絡を取っていたのか。そして「Krauss-Satow」を軸とする戦間期の日墺の日本風俗の研究者ネットワークがどのように広がっていたかを探ったが、日本で収集した資料からはその手がかりが得られなかった。 4.そこでウィーン大学でリサーチをした結果、“Friedrich S. Krauss und Tamio Satow: Ein bibliobiografischer Versuch zu einer internationalen Freundshaft und zur Geschichte der Sexualforschung in Osterreich und Japan”(2013)と題する論文に出会い、執筆者のSepp Linhart教授とコンタクトを取ることができた。 5.Linhart教授から二人の交流のあり方を明らかにする資料がウィーンにもないことを確認。そしてカリフォルニア大学にKraussの残したものが保管されており、Martischnig氏が目録を作成した、という情報を入手することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.クラウスはヒットラー政権下で、佐藤民雄や日本の軍事政権下で弾圧、抑圧されていたため、発禁や焚書で多くの資料が紛失していて、私的な文書などが公的な資料として保管されていない。 2.クラウス関連の資料がドイツ語であるため、資料の内容を正確に把握するには翻訳を依頼する必要があるが、専門的な知識を持つ翻訳者が見つかっていない。 3.研究発表の場として、今年度は日本比較文化学会を選んだが、本研究の領域に近い研究分野の専門家がおらず、的確な批判や発展的なコメントが得られなかった。 以上のことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
11.で示した三つの問題点について以下のような形で改善し、円滑に研究が進められるよう努めたい。 1. クラウス自身が『日本人の性生活』をまとめる際に参照したとされる資料については、リンハルト教授の示されたカリフォルニア大学図書館に行って調査を進めたい。佐藤民雄(紅霞)については、佐藤民雄の親族を探す、または佐藤民雄周辺の民俗、風俗学者たち(藤澤衛彦、梅原北明など)から手がかりを探っていきたい。 2. 早急にドイツ語の翻訳者(または翻訳サービス)を見つけ、主要文献を読み進めていきたい。 3. 今後は日本近代文学、民俗学、日墺関係についての(国際)学会で成果を発表していきたい。
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Research Products
(1 results)