2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Reception of Japanese Sex Culture in Interwar Europe
Project/Area Number |
16K13138
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
加藤 めぐみ 都留文科大学, 文学部, 教授 (70717818)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 検閲 / 焚書 / 性文化 / カズオ・イシグロ / 幽霊 / 浮世 / 幻想 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016-2018年度にかけて戦間期ヨーロッパにおいて日本の性文化がいかに受容されていたかを明らかにする本研究の鍵であるオーストリアの人類学者 Friedrich Kraussと日本人の性文化研究者 佐藤民雄(佐藤紅霞)との交流の実態の調査を進めてきたが、2018年度のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のCharles E. Young Research Libraryでの調査で、Friedrich S. Krauss Papersにあるコレクションに日本の性文化関連の資料は含まれていなかったことを受け、2019年度は再びヨーロッパ(オーストリア、イタリア、ドイツ)に視点を移して調査を続けた。しかし期待する成果は得られなかった。戦間期の日本の性文化に関する文書が、公的な図書館・研究施設に保管されていないことから、あらためて日本の軍事政権下、また独墺のナチス政権下において、性文化研究が検閲や抑圧の対象となり、焚書とされた可能性が濃厚であることが確認された。 そこで2019年度はこれまでのヨーロッパにおける日本の性文化の受容についての研究で得た知見を生かして、戦間期から戦中にかけての軍事政権下における思想統制、検閲、焚書の問題を扱ったイギリス人作家カズオ・イシグロの小説における日本の文化、セクシュアリティの表象を分析する研究を行った。そこでは日本の性文化が、幻惑的な「浮世」として捉えられられていることがわかった。さらにイシグロ作品に描かれた幽霊的なるもの、日本人女性のセクシュアリティの表象に、ヨーロッパ文化における日本幻想、さらにはイシグロ自身のノスタルジアを含んだ日本文化の歪曲した理解を見いだすことができた。
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Research Products
(2 results)
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[Book] イシグロと日本2020
Author(s)
(編著者)田尻芳樹, 秦邦生(執筆者)麻生えりか, 加藤めぐみ, 荘中孝之, 菅野素子, 三村尚央, レベッカ・L・ウォルコウィッツ, マイケル・サレイ, レベッカ・スーター
Total Pages
320
Publisher
水声社
ISBN
978-4-8010-0508-2