2017 Fiscal Year Research-status Report
生殖医療技術の規制に関するジェンダー分析―通文化的・通時的研究を中心に
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16K13139
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
柘植 あづみ 明治学院大学, 社会学部, 教授 (90179987)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生殖医療 / 生殖補助技術 / 生命倫理 / 医療人類学 / 国際比較 / 台湾 / 日本 / メディカルツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度はまず2016年度末に実施した台湾調査の調査結果の検討を行った。 台湾では卵子提供による体外受精を含む生殖医療についての法律を整備し、法律に基づいて実施している。法律に基づいていれば、つまり卵子提供者への謝礼が「栄養費」という名目の範囲内であれば、また卵子提供者とその卵子によって子どもを持とうとしている者が匿名で親族以外であることなどの条件を満たせば、医療施設は積極的に実施しており、さらに日本など海外からの患者を受け入れる施設もいくつかある。それらの施設は日本においても説明会を開催して、患者を増やすのに熱心である。日本では第3者が関わる生殖医療の実施には、利益を重視することを控える傾向があるが、メディカル・ツーリズムの一環と捉えられているようである。 日本人が海外に卵子提供や代理出産を求めて行っていたタイでは、日本人男性からの依頼によって20名弱の子どもが代理出産によって生まれていたこともひとつの契機となって外国人の代理出産依頼が法律で規制された。代理出産も卵子提供も、タイの業者以外にオーストラリアの業者がオーストラリア人を顧客の中心にしてきた。オーストラリアでは州により異なるが、世界的にも早い時期から生殖医療についての法整備が行われ、第3者が関わる生殖医療技術によって生まれた子どもが出自を知る権利を認めるなど、先進的な試みが行われてきた。それが生殖医療の歯止めとなって、経済的に安価に代理出産を依頼できるタイあるいは東南アジアの他国へと業者と依頼者が移動していくことは、法規制や人権等を検討する際に、十分に考慮すべき視点である。そのため、オーストラリア調査の準備を行っている。 日本国内では、卵子提供、精子提供の医療に関わっているキーパーソンへの調査を開始し、継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本国内でのインタビュー調査の協力者が少なく、若干進捗が遅れている。次年度はオーストラリア調査と日本調査を進めることで取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 国内での卵子提供を伴う体外受精の実施などに関わっている医療者やコメディカルの方へのインタビュー調査からルール作りについて検討する。 2) 日本で卵子提供を伴う体外受精について社会科学、生命倫理学的なアプローチをしている研究者へのインタビューから、どのような視点から取り組んでいるのかを調査する。 3) オーストラリアでの国内の規制と国外でのオーストラリアの人のメディカル・ツーリズムについてオーストラリアでのフィールド調査調査する。 4)オーストラリアで開催される国際会議において、アジア・オセアニア地域の研究者と情報・意見の交換を行う。国際共同研究の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
次年度、研究協力者を含めてオーストラリアにフィールド調査に行く予定をたてたために、次年度の予算だけでは不足するために今年度予算の使用を控えた。
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Research Products
(8 results)