2016 Fiscal Year Research-status Report
近代中国マスツーリズムのメディア社会文化史的研究:友声旅行団と倹徳儲蓄会を中心に
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16K13140
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 賢一郎 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (90262097)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ツーリズム / 中国 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代中国随一の国際都市であった上海を地盤に、1910年代後半から相継いで誕生した数多の民間旅行団体のうち、特に「友声旅行団」及び「倹徳儲蓄会」旅行部の活動を対象として、メディア社会文化史の視点から本格的なモノグラフを作成しようとする挑戦的研究である。友声旅行団は1932年当時会員5000名を数え、1949年の人民共和国成立以前に1600回を超えるツアーを企画・実施していた、文字どおりマスツーリズム(大衆旅行)を牽引した一大民間団体である。もう一つの倹徳儲蓄会も、会員数1万人を超えた民間のアソシエーションであり、様々なレジャー活動を行っており、旅行がその大きな一角を占めていた。 初年度として、まず既往研究のレビューを実施した。その結果明らかになったのは、両者とも、とりわけ後者の旅行部の活動は従来の中国近代史研究の分野ではほとんど知られておらず、観光旅行、ツーリズムに特化した専門史の領域でも、ごくわずかな言及があるのみで、これを一つのトピックとして扱った研究は皆無であることが判明した。 資料収集と分析では、近代中国におけるマスツーリズムを「半官」のポジションから大きく支えた中国旅行社の生みの親、陳光甫の『日記言論集』や陳光甫の創設した上海商業儲蓄銀行に関する資料集を入手し、近代中国におけるマスツーリズムの歴史的展開過程に関する基本的認識を深めることができた。この他にも、近代中国の観光文化に関連する研究書等をいくつか入手することができた。ただ、本研究の主要ターゲットである上記2団体の機関誌・会報に関しては、もともと平成28年度の夏季及び春季休業期間中に上海・北京で資料収集を実施する予定であったところ、所属機関の本務多忙により実現できなかったため、第2年度の大きな課題として残されている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現時点まで、当初の研究計画のごく一部を実施したに留まる状況になっている。理由は端的に所属機関における本務に忙殺されたためである。所属機関の将来計画に係る専門委員会やワーキンググループ等の責任者に任命され、当初計画では夏季と春季の休業期間中に予定していた現地(中国)での資料調査が実施できなかった。また、国内機関における資料調査も実施できなかった。そのため資料の収集がほとんど進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度(平成29年度)も所属機関の専攻長を新たに拝命し、新設のメディア・ツーリズム研究センターのセンター長にも任命されるなど、多重的に重要な役職を担う状況は変わっていない。現時点で海外調査の日程を確保できるか、必ずしも見通しが立っていないが、部局内での業務分担を精査し、極力調査日程を確保するよう尽力する。 また、資料調査の方針を大きく変更することも検討している。具体的には、国内機関(関西大学アジア研究センター)での調査対象としている中華民国期上海の日刊紙『申報』のデータベースに関しては、研究代表者の所属機関(北海道大学)にて購入する方策も考えられる。
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Causes of Carryover |
進捗状況の欄にて前述のとおり、所属機関の本務多忙により当初予定していた海外及び国内での資料調査の日程が確保できず、調査旅行を実施することができなかったため、大幅な未使用額を次年度に繰り越すことになったもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
所属機関の業務分担をあらためて精査し、エフォートの調整を行ったうえで、夏季休業期間中、および/または春期休暇期間中に中国・台湾への調査旅行を実施できるよう日程の確保を行う。 また、資料収集・分析の主要な対象としている『申報』については、前年度の繰越金が加算された分も有効活用し、購入して所属機関に設置する可能性も検討する。
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