2017 Fiscal Year Research-status Report
近代中国マスツーリズムのメディア社会文化史的研究:友声旅行団と倹徳儲蓄会を中心に
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16K13140
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 賢一郎 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (90262097)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ツーリズム / 中国 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
1)本年度は、初年度に積み残された調査事項の推進補完に尽力した。また、調査の進め方を変更し、効率的に調査を進められるよう調査環境の再整備を行った。 2)資料収集状況については、研究対象となる友声旅行団の機関誌(『友声』『友声旅行月刊』等)や倹徳儲蓄会の会報(『倹徳儲蓄会月刊』『倹徳儲蓄会会刊』『新倹徳』等)をデータファイルの購入やオンラインデータベースの有効利用により相当程度入手でき、研究資料の蓄積は前年度に比して大幅に進展した。また、『申報』のデータベースも入手できたため、当初計画していた関西大学での出張調査の必要がなくなり、大量のデータを効率よく収集できるようになった。しかしながら、上海市档案館所蔵の「中国旅行社档案」や友声旅行団のアーカイブズは、予定していた海外調査が本年度も実施できず、大きな課題として残った。 3)研究成果として、倹徳儲蓄会の旅行団を中心に近代中国マスツーリズムの前史から黎明期について論文を発表することができた。主要な論点・主張は以下のとおりである。 ①従来通説では中国旅行社の活動が近代中国旅行史の圧倒的な中心として記述され、それ以外の旅行団体の活動はほとんど不可視な状況に留まっていたが、『申報』その他の史料により、倫理・宗教的な色彩を帯びた民間組織が1910年代半ばから団体旅行を開始しており、特に20年代に入ってから大衆的展開を見せることが実証できた。②中国におけるマスツーリズムの歴史的展開プロセスを欧米におけるそれと比較分析することにより、近代的マスツーリズムの先駆と位置づけられるトマス・クック社と倹徳儲蓄会とのあいだに極めて類似した展開が見いだせることを解明した。③さらに、倹徳儲蓄会の活動をメディア社会文化論の視点から考察し、それが近代国民国家と社会構成、空間認識と交通移動の実践との関係性において注目すべき展開がなされていたことも指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度に引き続き今年度も所属機関での本務多忙(専攻や新設の研究センターの責任者に就任したため)により、本研究課題へのエフォートを十分に注ぐことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)当初計画していた中国(上海、北京)での資料調査は可能な限り一部でも来年度に実施する予定である(夏季休業期間中を想定)。 2)研究成果の発信として、上海または台北での研究発表を実施する。 3)成果を論文にまとめ、国際的学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
(理由)進捗状況の欄に記載のとおり、所属機関での本務多忙により当初予定していた海外及び国内での調査日程が確保できず、資料調査が実施できなかったため。 (使用計画)購入した『申報』データベースの利用には、現有設備よりもCPU速度やメモリ容量等のハイスペックなPCが必要であることが判明したため、その購入経費に充てる。また、他の新聞データベースの購入も検討する。
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