Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャル・ツーリズムの支援モデルである,a)インクルージョンモデル, b)参加モデル,c)適応モデル,d)刺激モデル,の4類型すべての研究成果を総括する。第一に,規模の大きい「インクルージョンモデル」(あらゆる人の参加を促す観光モデル)について,研究計画に定めた需要面の実態,課題を明らかにすることを目的として,本研究の研究協力者であるニューヨーク大学の研究者から米国の先行研究に関する知見を得つつ,日本の家族層を対象とするアンケート調査を最終年度に実施した。3,090件という有効回答数は,研究協力者が過去に米国で実施したサンプルサイズ(2,614件)に相当するものであり,国際比較分析を鋭意進めている。第二に,「参加モデル」(弱者の参加を促すための観光モデル)の実現に向け,研究協力者であるハワイパシフィック大学の研究者及び旅行会社JTBと協議を進め,2019年9月に教育観光プログラムを開発,実施した。第三に,「適応モデル」(弱者のために特別に設計された観光モデル)の実現に向け,社会福祉法人理事長・弁護士を囲む勉強会(2019年11月)における意見交換,日本子ども虐待防止学会全国大会(2019年12月)における発表等を通じて専門家の知見を得つつ慎重な検討を重ね,石川県内で自立援助ホームを運営するNPO法人との間で,当該施設の利用者を対象とした旅行支援策についての協議を進めた。Covid-19の影響により補助期間中の実施には至らなかったが,引き続き協議を進めることとしており,児童福祉の新たな一助となることが期待される。第四に,経済団体が主催する金沢創造都市会議(2019年12月)に招聘され,本研究の知見に基づき,都市の賑わい創出に向けて若年層が滞留するまちづくりの意義について講演を行い,「刺激モデル」(弱者の観光を促進して経済を刺激する観光)の視点から供給側への意識啓発を行った。
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