2016 Fiscal Year Research-status Report
「強さ」の社会倫理学―レジリエンス概念の社会倫理的基盤の構築
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16K13153
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 教授 (20367725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 花鈴 南山大学, 総合政策学部, 講師 (40635702)
篭橋 一輝 南山大学, 経済学部, 講師 (60645927)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レジリエンス / 生態学的レジリエンス / 社会的レジリエンス / 自殺対策 / ランドケア / 中間要因アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、レジリエンス概念とそれに関連する実践についての基礎研究を行った。まず、レジリエンス概念に精通した環境学の専門家を招き、生態学的なレジリエンスと社会的レジリエンスに関する基本事項を学んだ。また、レジリエンス概念に関する基本文献を収集し、レジリエンス概念はどのような概念として登場し、どのような倫理学的含意を有するのかを考察、研究会で報告を行い、討議を通じて論点を明確にすることができた。 他方、レジリエンスに関わる実践についての調査も実施した。まず、岩手県において自殺対策を含めた保健事業として先進的に実施されている地域内交流の活動を視察し、非都市型の社会的レジリエンスのあり方を考察する実証的基盤に触れることができた。また、オーストラリアより、ランドケア活動の中心人物を招き、社会的レジリエンスのあり方について意見交換を行った。農業などを通じて自然に関わる当事者としての個人と、関連行政機関との関係性が、ランドケア活動において絶妙なバランスで維持されている要因を探ることが課題として浮上することとなった。 こうした理論的かつ実証的な基礎研究に基づき、研究代表者と研究分担者を含む共同研究者がそれぞれ自分自身のテーマ(本質的自然資本、自殺対策、内部告発など)に即しながら研究を進め、札幌で開催された第10回応用倫理国際会議において、レジリエンスについての英語による研究報告を行った。それらの研究報告はすべて、「中間要因アプローチ」という独自の分析手法を用いて構成されており、この手法が、レジリエンスの社会倫理的基盤を考察する上で有効であるということを確信するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請額の半額での採択という制約の中で、当初の計画を変更せざるを得なかった部分はあるものの、上述の通り、初年度としては順調に共同研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の計画では、平成29年度には、国際ワークショップを通じて、レジリエンス概念の領域横断的・地域横断的検討を実施することになっていたが、これについては、採択額の範囲内での実施を再考する必要がある。規模を縮小しつつ、内容をより濃いものにする等の対応策を検討中である。 他方、レジリエンス概念の理論的・実証的研究そのものについては、平成28年度に引き続き、精力的に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者それぞれの残額がそれほど多くなかったため、より有効な使途での支出をすべく、次年度使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
関連する領域の専門家を招く際の謝礼金とする予定である。
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