2017 Fiscal Year Research-status Report
「強さ」の社会倫理学―レジリエンス概念の社会倫理的基盤の構築
Project/Area Number |
16K13153
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 教授 (20367725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 花鈴 南山大学, 法学部, 講師 (40635702)
篭橋 一輝 南山大学, 国際教養学部, 講師 (60645927)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レジリエンス / 生態学的レジリエンス / 心理的レジリエンス / 社会的レジリエンス / 自殺対策 / 持続可能性 / ランドケア / 中間要因アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始2年目の本年は、初年度における理論的な研究を踏まえつつ、レジリエンス概念に関連する実践についての調査研究を中心に実施した。 調査先としては、社会的レジリエンスに関わる取り組み実践として、茨城県水戸市の水戸桜川千本桜プロジェクトに着目し、当該プロジェクトを牽引する実務者・活動者からのヒアリングと現地視察を実施した。都市再整備のなかで桜の植樹がむやみに行われてきたことで、人間の生活環境や自然環境への影響に加えて、地域の歴史の忘却という事態を招きうることがわかった。どの場所にどのような種類の桜を植樹するのかは、生態学的な知見のみならず歴史学的な知見を必要とし、そうした総合的な見地から植樹計画を立てなければ、持続可能な文化的都市環境はつくれない、という洞察は、レジリエンスの社会倫理的基盤を考えるうえで重要な示唆を与えることとなった。 他方で、心理的レジリエンスに関わる取り組み実践として、福井県東尋坊における自殺対策の試み、および、石川県こころの健康センターの試みに着目し、中心となる実務者・活動家からのヒアリングと現地調査を実施した。いずれの試みのなかにも、個々の人間の自律性を尊重しながら、個人では賄いきれない部分に適切な支援を提供する基盤的な環境を用意することの重要性が見て取れた。これらの試みは、自律と連携のあり方に関する「補完性の原理」の適用例と捉えることもできるため、レジリエンスの社会倫理的基盤と「補完性の原理」との関わりを理論的に研究する見通しを立てることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、共同研究者の間でレジリエンス概念に関する理解の共有を行い、それぞれの専門領域と主たる研究テーマからレジリエンスを論ずる試みを行ったことにより、共同研究者の間でのレジリエンス概念をめぐるコンセンサスが形成されていたため、本年度における調査研究への視座が確保されており、円滑に共同研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に実施した調査研究を次年度も継続するとともに、最終年度であることを踏まえて、レジリエンス概念の社会倫理的基盤とはどのようなものか、ということに関する理論的・実証的な問題提起を明確に行なうことを試みる。
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Causes of Carryover |
研究分担者それぞれの残額がそれほど多くなかったため、より有効な使途での支出をすべく、次年度使用とした。次年度使用額については、関連する領域の専門家を招く際の謝礼金、あるいは、調査研究費用に用いる予定である。
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Research Products
(8 results)