2017 Fiscal Year Research-status Report
中国西蔵自治区に保存されたインド語唯識文献写本探求
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16K13154
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
松田 和信 佛教大学, 仏教学部, 教授 (90268128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加納 和雄 駒澤大学, 仏教学部, 講師 (00509523)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仏教学 / 写本 / 梵語 / チベット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、9世紀以降にインドから将来されて、現在は中国の西蔵自治区ラサに保存されているインド語仏教写本類(主として梵文仏教写本類)の中から、その存在が判明している『瑜伽論』「摂決択分」を中心とする唯識思想関連文献について、その保存情況を明らかにして、すでに入手済みのインド語写本資料については解読研究を行い、写本から回収されるインド語テキスト全体の出版に向けた予備的研究を行うことである。現在までの調査の結果、『瑜伽論』「摂決択分」の梵文写本は100年前に分割されて、その一部は他の3種の写本(1.入無分別陀羅尼3葉、2.第三修習次第8葉、3.華厳経普賢菩薩行願品断簡1葉)と共にロシア皇帝ニコライ二世に仏教僧ドルジエフを通して贈られ、現在はサンクトペテルブルクの東洋写本学研究所に保存されていることが判明している。さらにこれら一連の写本は紀元11世紀にチベットに入ったアティシャによってインドから運ばれた写本の可能性の高いことも本研究の研究分担者によって明らかにされている。平成29年度は、分割されてロシアのサンクトペテルブルクに保存されているこれら一連の写本類の中から、平成28年度に引き続いて『瑜伽論』「摂決択分」を中心とする解読と梵文テキストの作成を進めたほか、研究代表者はオランダ・ライデン大学で開催された研究発表会で『華厳経』「普賢菩薩行品」のサンクトペテルブルク写本について、杭州の浙江大学で開催された研究発表会で『菩薩蔵経』のラサ写本に含まれる虚妄分別の概念について研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国の西蔵自治区に伝えられたインド語仏教写本類の中で、唯識思想文献に限ると、その存在が判明しているが、未解明のまま残されている文献は『瑜伽論』「摂決択分」の梵文写本である。この写本は二つに分割され、一方はロシアのサンクトペテルブルクに保存されているが、それについて入手済みで、29年度は28年度に引き続いて写本の解読研究を進めたほか、研究代表者と研究分担者は共に複数の海外学会において関連写本について研究発表を行い、各国の研究者と情報交換の場を持った。ラサに保存されている『瑜伽論』「摂決択分」の主要部分については、この写本も含むと推測される、最近ラサで刊行された写本の影印版61巻の内容について海外の研究者より新たな情報を得ることができた。相手方の都合で29年度はラサでの現地調査は実現できなかったが、影印版61巻の内容も含めて、ラサに保存された梵文写本の全体像の解明に近づきつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに入手した西蔵自治区ラサの梵文写本のうち、唯識思想関係文献の解読を続ける。さらに西蔵自治区ラサの西蔵社会科学院貝葉経研究所と日程を調整した上で、研究代表者と研究分担者は西蔵自治区ラサの研究協力者であるNgodruop Tsering 研究員とともに、西蔵自治区に保存されたインド語仏教写本の閲覧調査あるいは写本写真の入手を目指したい。その中でも唯識思想文献写本に焦点を絞り、特に『瑜伽論』「摂決択分」の写本がどのように保存され、ダライラマ十三世の時代にサンクトペテルブルクに持ち出された12葉以外に、現在何葉がラサに保存されているかを明らかにし、写本写真を入手して解読研究を行うことを最終目標にして、それに至る調査分析研究を続けたい。
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Causes of Carryover |
29年度に購入を予定していた研究書籍の一部を未刊行等の理由で30年度に変更したことによる差額であり、30年度に購入します。
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