2017 Fiscal Year Research-status Report
南インドのヴェーダ儀軌「チャダンガ」の基礎的研究:古代と現代を結ぶ新領域の開拓
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16K13155
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
手嶋 英貴 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (30388178)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | チャダンガ / アグニホートラ / マラヤーラム / バウダーヤナ / シュラウタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題遂行のための調査対象である「シュラウタ・チャダンガ」文献は、これまでもっぱら写本の形で伝承されてきたものであり、一度も公刊されていない。ところが、平成29年8月に行った現地調査では、ヴェーダ伝承村落の一つペルヴァナム地区のあるブラーマン家で、バウダーヤナ派のシュラウタ・チャダンガを自家製本の形で刊行することがわかった。そこで当の家を訪ね、本課題の主な研究対象としているアグニホートラ祭を扱った章の準備原稿を入手した。今回得られたものは、ケーララ州内にある多様なシュラウタ・チャダンガの一伝本にすぎないが、ある程度「読み」の確定したテキストを一つ持ちえたことは、今後様々な手書き写本を解読していく上で大いに役立つ。 さて、この「バウダーヤナ・シュラウタ・チャダンガ」アグニホートラ章を翻訳することが当面の目標となるが、そのためには、チャダンガ文献の言語的理解を深めるための基礎資料づくりが欠かせない。チャダンガのマラヤーラム語は、現代で一般的な語句・表現とはしばしば大きく異なっている。特に、祭具など特殊な事物の名称や、祭官が行う所作の表現などは、通常の辞書にないことが多い。そこで、先行研究で唯一、チャダンガ(ただしシュラウタではなくグリヒャのもの)のテキストを翻訳しているAsko Parpolaの論文“Codification of Vedic domestic ritual in Kerala”. Travaux de symposium international: le livre, la Roumanie, l’Europe (2011 Bucarest), pp.261-354を基にしたヴェーダ祭式用語小辞典、およびチャダンガで多用される表現を文法事項別にまとめた一覧表を作成した。これにて、平成30年度に予定する研究課題の遂行に向け、必要な資料がこれで概ね整備されたことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に予定する研究課題の遂行に向け、必要な資料とツールが整備された。また現地調査を通じて、チャダンガの内容読解に必要となるブラーマン学匠との人脈も、本課題の遂行に十分なだけの広がりを得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
「バウダーヤナ・シュラウタ・チャダンガ」アグニホートラ章のテキストと英訳の提示を中心とする研究論文の作成に進む。また、ヴェーダ祭式文献の発展史におけるチャダンガ文献の特色と意義、さらにはケーララ州のブラーマン社会・文化におけるその影響など、より広い視野での位置づけを行い、学会、シンポジウム等の適切な場で情報発信を行う。
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Research Products
(7 results)