2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K13158
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
保坂 俊司 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80245274)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シク教 / アマルダスの政治思想 / ヒンドゥー・イスラム融和 / 宗教の平和的共生思想 / ミシュル / イスラムとの共生 / 平和概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では全く研究されていないといって過言でないシク教、さらにその実質的な教団確立者のアマルダスの存在は、現在の様な宗教紛争の時代に合ってこそ重要である、その視点かアマルダスのヒンドゥ-・イスラム融合思想の探求を第一とするが、さらに重要な点は、思想の具体的な社会における展開に関して、研究しシク教教団という特異な宗教教団の思想とその知恵、とその具体的な展開の過程を明らかにすることを目指している。 今年度は、主に膨大なアマルダスの業績を聖典『グル・グラントサーヒブ』から抽出する作業を行っい、それをファイルし、分析を徐々に進めている。特に、宗教対立が激しいヒンドゥー教とイスラム教との社会的な共生)をアマルダスがシク教教団という社会組織を構築する際に、どのように両者の融和、共生思想(具体的には、その政治思想)を展開し、シク教教団という独自の集団を形成したかについて、思想的側面と歴史的な側面から検討している。その成果の一部は、特に政治的な共生思想の具体的あり方に言及した『親鸞研究』(2018年6月刊行予定)において、講演録として掲載。また、シク教の教団史からの検討は、拙著『グローバル時代の宗教』(北樹出版社2018年9月刊行予定)において、言及している。今年度より、シク教の政治思想、就中アマルダスの政治思想に着目し、圧倒的なムガル政権下におけるパンジャブの小集団であったシク教を、独立した教団に成長させたその現実的な手腕と政治思想を明らかにすことを試みた。つまりシク教教団の独立を実現させたその手法と思想を通じてイスラムとの実社会における共生の可能性をアマルダスにおいて明らかにすることの意義について、ある程度明確化できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シク教の研究は、宗教対立が激しくなっている現在社会においてこそ、非常に重要な研究である、との視点から研究を開始したが、その意義はますます大きくなっている。特に、イスラム教の世界的な拡大という現実に対して、シク教の存在は思想的、宗教的のみならず現実社会における共生、特に政治的な共生という視点が、非常に重要である。というのも、従来のシク教研究は、報告者を含めて思想研究に重点が置かれていたが、実際にはイスラム政権の圧倒的な支配の中で、独自の思想と宗教儀礼、そして教団を作り、発展させたその経緯を明らかにすることが、イスラムとの共生という喫緊の課題に対応するための重要な先例となるために、アマルダスの思想を明確にすることを引き続き行っている。さらに、歴史的な検討を、政治的な側面から明確化するために、『アクバル・ナーマ』におけるアマルダス、シク教関係の部分を検討している。その際、インドのシク教研究者とのメールなどでの交流を通じて、意見交換を行っている。また、その成果は、機会あるごとに発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
シク教特に、アマルダスの研究は単なる思想研究に終わらない現実政治の側面が重要であり、その点からの研究は、インドのシク教研究者との交流が重要である。現在、数人の研究者とネットワークを構築し、メールなどで意見交換や研究サポートを受けておいる。また、直接インドへの調査も行う予定である。 今後は、完成年度までに、アマルダスの政治(平和)思想、つまりイスラム政権との共生とシク教の独自性の確保に関して、彼が具体的にどのように展開していたかを中心に検討する。というのも、抽象的な思想の展開では乗り越えられない教団の確立と発展的展開は、すなわちイスラム政権との軋轢を生むことでもあり、それをアマルダスがどのように乗り越えたかを知ることが、イスラムとの共生という21世紀の国際社会が直面する課題の解決の一つのヒントとなると考えるからである。報告者は、この点を中心に研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
文献研究の準備のために、インドでの現地調査を次年度に回し、準備を行ったたために、次年度に繰り越した。
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Research Products
(2 results)