2016 Fiscal Year Research-status Report
モダニズムの思想圏における保守的文化相対主義の位相-ゴビノーからマルローまで
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16K13161
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
吉澤 英樹 成城大学, 文芸学部, 非常勤講師 (30648415)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モダンとアンチモダン / フランス第三共和制下の錯綜 / 植民地行政 / 保守的文化相対主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
三年の研究期間の初年に当たる平成28年度は、1)本研究のコーパスである1850年から1950年までのフランスにおけるメルクマールとなるテクストの選定・精読、2)選定期間テクストの読解・論点の展開を目的とする研究会の開催を予定していた。1)に関しては主にアルチュール・ド・ゴビノーの『人種不平等論』を中心に据えたが、テクスト自体が錯綜しており、テクスト中における「混血」や「黒人を中心とする人種観」といった研究テーマに関連した主題を整理して読解を行い、夏季休暇中にはゴビノーの思想圏内にある著述家に関する資料収集を主にフランス国立図書館で行った。その上で、第三共和制を象徴するグランゼコールで教育を受けた保守的な外交官作家でありゴビノーの読者であったポール・モランを中心に据え、その官僚としての活動ならびに作家としての活動の背後にあるイデオロギーの問題をゴビノーの思想の延長線上にあるものとして分析した。前研究で扱った両次大戦間の黒人文化表象に関連する主題として、当時の保守的芸術家の立場の一つとして官僚作家という立場について論じる学会発表を行った。また、第三共和制下、専門職としての側面を強めていった外交官僚の職能や制度的立ち位置の変化に着目しながら、モダニズム期における外交官僚のあり方とその作品への反映を分析し、当時の保守的文化相対主義の一面という視点から考察し、論文として発表した。2)に関しては下記の述べる理由から研究会の開催を見送ったため、共同研究としては表面的な活動はしなかったものの、主題の周辺で研究活動を進める研究者と連絡を取り、前課題を発展させる形での共同研究斑の組織を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年中に所属研究機関の移籍が決定したことにより、当初計画していた前課題を引き継ぐ形での関東地方における固定メンバーによる定期的な研究会は次年度以降は困難になることが予想されたため、開催を見送った。そのかわり、研究協力者と打ち合わせを進め、平成29年初頭にシンポジウムを開催することによって共同研究を進めることにした。一方で、個人研究に関しては当初の予定どおり進め、成果も順次発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に行った基幹テクストの精読に関しては、それぞれを専門とする研究者と意見交換をしながら現れた幾つかの主題に絞り、今後はそれぞれ影響下にある二次テクストを分析することにより、19世紀から20世紀にかけてフランスの第三共和制期に顕在化する保守的文化相対主義の有り様を個別の事例を中心に明らかにしていく予定である。その個人研究としての成果は論文の形で発表し、共同研究としてはシンポジウムを開催することによってその経過とその時点までの研究成果を発表していく。
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Causes of Carryover |
延期ののち2017年1月にセネガル・ジガンショール大学で開催予定であったシンポジウムが政情不安により中止になったことと、定期的な研究会の開催に代えて2018年初頭にシンポジウムを開催するために出費をセーブしたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越分と当該年度助成金を合わせてのものは、当初の使用計画に加え、2018年初頭のシンポジウム開催費用やそれに関連した海外研究協力者の招聘費用に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)