2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13163
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
濱崎 友絵 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (90535733)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移民と音楽 / 音楽の伝承 / ドイツにおけるトルコ系移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドイツに定住するトルコ系移民の人々が、ホスト社会の中で、どのように自分たちの音楽をとらえ、次世代に伝えようとしているかを明らかにしようとするものである。1970年代以降、ドイツの各地に形成されていったトルコ・コロニーでは、トルコの古典音楽や民俗音楽など、いわゆる「トルコ音楽」が受け継がれてきた。本研究では、こうしたディアスポラ下における音楽の「再編」と伝承のメカニズムをミクロ的観点から描き出すことで、文化接触や音楽変容の問題に新たな視座を提供することを目指すものである。 上記目的のため、平成28年度においては、ドイツにおけるトルコ系移民およびディアスポラ下における音楽の在り様を検証した二次資料の収集および読解を中心におこなってきた。ギュネイらが指摘するように、1990年代以降のドイツにおけるトルコ系移民の音楽コミュニティは、自国文化の静的な「消費者」ではなく、むしろ積極的な「製作者」としての立場をとり、移民第一世代とは異なる形でダイナミックな音楽文化を生み出してきた。[Guney et al.2014]。本研究は、まさにこうした社会、文化を取り巻く動的なコンテクストの中に「伝統音楽」を位置づけつつ、その継承のプロセスを検証するものである。それゆえ本年度においては、音楽関連文献のみならず、移民にかかわる社会学関連の最新の研究の収集と読解を進めた。具体的には、現在の国際社会における移民受け入れをめぐる現状[小井土:2017]、ヨーロッパにおける移民第二世代の教育問題[山本 他:2017]、また、ドイツにおける移民教育の実践と問題[伊藤:2017]などに依拠しつつ移民社会と現状についての整理をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に予定していた現地調査が実施できなかったことから、平成28年度は、研究の基礎的段階と位置づけ、文献資料の収集と読解、さらにドイツにおけるトルコ・コミュニティに関する基礎情報の整理を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、引き続き基礎資料の収集と整理を進めつつ、8月に約2週間、ドルトムント市に現地調査に赴く予定である。とくに同市のトルコ教育センターでの音楽教育プログラムの実態調査に力を注ぐ。なお、本調査は質的調査を主とするため、トルコ系移民の人々の声に肉薄する必要があるが、昨今のイスラームを取り巻く状況と相まって調査には困難が予想される。その場合は、調査対象とするコミュニティや組織を変更するなど柔軟に対応しつつ、設定した研究課題に取り組んでゆく。
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Causes of Carryover |
初年度に計画していた現地調査を実施することができなかったため、未使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の未使用額については、平成29年度請求分とあわせて、文献資料の収集および現地調査による予算執行を予定している。
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