2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13163
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
濱崎 友絵 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (90535733)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移民と音楽 / 音楽の伝承 / ドイツにおけるトルコ系移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1970年代以降にドイツで形成されたトルコ・コロニーにおいて、トルコ系移民の人々が、いかに「トルコ音楽」をとらえ、それを伝えようとしているのかを検証することを目的とする。ディアスポラ下における音楽の「再編」と伝承のメカニズムを共時的・通時的観点から描き出すことで、現代社会で生み出される文化接触や音楽変容をめぐる一事例を提供し、新たな視座を提供することを目指す。 上記目的のため、平成29年度においては、前年度に収集した資料読解を進めるとともに、10月末から11月にかけておよそ一週間、ドルトムントを訪れ、ドイツ人コミュニティの現状を調査するとともに、トルコ教育センター所長(S.ソルマズ氏)とのインタビュー調査をおこない、同センターで展開されている音楽教育の現状を確認した。 トルコ教育センターはドルトムントに1993年に設立され、とくにトルコ系移民の子供たちを対象に、トルコの民俗音楽、舞踊、民俗楽器からピアノ等の西洋楽器、さらにトルコ語やドイツ語まで多様な授業を有料で提供する機関となっている。インタビュー調査を通して見えてきた点は、本機関がドイツとトルコの「文化的統合」のはざまで、「トルコ音楽/伝統」を戦略的に用いようとしている方向性であり、今後は、こうした音楽の選択と実践をめぐって、トルコ系移民の人々がいかに「トルコ音楽」を受け止め伝えようとしているのか、その実態を調査することが課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度においては、10月にドルトムント・トルコ教育センターにおいて現地調査を実施し、また平成30年2月にはトルコにおいて、ドイツのトルコ系移民にかんする資料収集をおこなったことで、これまで大幅に不足していた情報の補完が可能となったものの、とくにトルコ教育センターにおける音楽教育プログラムの実態については、時間的な制約もあり調査が叶わなかった(調査直前に音楽教員の退職などがあったなど不測の事態が発生したことも関係している)。また現地で収集したトルコ語およびドイツ語を中心とした資料読解に想定以上に時間がかかっており、現在、その読解、整理を進めている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては上半期において、とくに資料読解、インタビュー内容等の精査をおこない、ドイツにおけるトルコ系移民の音楽およびドルトムント・教育センターの位置づけについて検討、整理する。下半期においては、ドイツ(とくにドルトムント)において再度、現地調査をおこない、同センターにおける教育展開と音楽伝承の実態を明らかにすることで、ディアスポラ下にある音楽の選択と伝承メカニズムについて考察をおこなっていく。
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Causes of Carryover |
初年度に実施する予定であった現地調査を、研究の進捗にかんがみ補助事業期間を延長して実施することを決めたため、次年度使用額が生じることになった。今後の使用計画としては、現地調査費、研究上必要な備品および資料購入費として計上しながら研究推進を図る。
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