2016 Fiscal Year Research-status Report
インド映画の“新しい波”「新中間層シネマ」の誕生―インド映画研究の確立を視野に―
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16K13172
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 博司 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (20230427)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インド映画 / 娯楽映画 / ボリウッド / 中間層 / 経済開放 / 映画研究 / ニューウェイヴ / ミドルクラス |
Outline of Annual Research Achievements |
インド娯楽映画の最新事情につき、様々な角度から取材・調査し、研究の基礎知識を得ることができた。具体的には、映画界の推移を検証するために、1980年代のタミル映画界で監督兼俳優として活躍し、現在はTVドラマ等の分野で精力的に活動している著名なラージャーシェーカル(Rajashekar)氏をご自宅に訪ねて面接調査をおこない、映画を中心とする娯楽産業の変化と動向について情報を得た。特に、80年代当時の業界の様子と最近の相違、推移の要因などにつき、内部の視点から具に話を聞いた。 海外在住のインド人(PIOとNRI)の娯楽映画の受容について、旧移民と新移民が併存する東南アジアのインドネシア共和国とマレーシア連邦の都市部(ジャカルタ、スラバヤ、クアラルンプル)のマルチプレックス(シネコン)に赴いて動向調査をおこなった。どのような種類の娯楽映画が在外インド人社会で受容されているか、インドから輸出されているかなどについて、概括的な知見を得た。3月にドイツ連邦共和国を訪れた際には、南インド出身で留学中の知人青年から、留学生の間でのインド映画鑑賞の様態について話を聞いた。 成果公開については、まず2016年8月20日に上梓された『新版 インドを知る事典』(岡光信子と共著)の第Ⅸ章「インド映画の歩みと現状」(308-337頁)の中で、近年の傾向を新中間層の成立と絡めて論じた。さらに、年度中に「インド映画が映しだす現代インドの社会と宗教―最近のトレンドを中心に―(Inidan Society and Religion in the Post-reform Period as Reflected in Contemporary Entertainment Films)」を執筆した。公益財団法人・日印協会のホームページ上のウェブマガジン『現代インド・フォーラム』に2017年4月上旬に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始年度に当たる昨年度は、著書の1章として本研究計画に関連する事項(インド映画の新動向・新局面と問題の所在)を記述し得た。また海外調査時に映画界内部の人間と外部の人間の双方から直接話を聞くことができ、比較的順調な滑り出しであった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度の進捗を踏まえて調査対象をインド本土に移し、新興の中間層の映画メディアの受容形態について調査をおこなう必要がある。また、航空機内のエンタテインメントとして近年インド映画作品が多く提供されていることについて、その背景事情を調査するつもりである。 以上のような映画作品を取り巻く社会についての研究にとどまらず、特徴的な作品、代表的な作品を選んでコンテンツを分析し、映画の制作手法における相違・推移を指摘したい。 インドの映画については、ムンバイで制作されるヒンディー映画(いわゆる「ボリウッド映画」)にとどまらず、リージョナル・シネマの方面にも目を向ける必要がある。本研究では、南インドのタミル映画に絞って最新の傾向等を抽出し、それらを全体のなかに位置づける作業をおこないたい。
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Research Products
(1 results)