2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Comprehensive Analysis of Censorship and Literature at Iwanami Shoten
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16K13196
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
塩野 加織 早稲田大学, 文学学術院, 准教授(任期付) (80647280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 名津子 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (10770125)
十重田 裕一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 検閲 / 岩波書店 / GHQ/SCAP / 内務省 / 出版 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、個別に追加調査を実施しつつ、これまでの調査内容を踏まえて以下のような成果を挙げた。まず塩野は、「本文生成プロセスから見た占領期検閲――岩波新書の検閲事例を中心に」と題する研究報告を、NPO法人インテリジェンス研究所主催第27回諜報研究会(2019年5月25日於・早稲田大学)で行った。この報告では、占領期検閲のシステムを書き手自身が内面化していくプロセスと出版機構との関わりを指摘した上で、岩波新書の複数の検閲事例を取り上げ、新書という刊行物特有の処分のありようとその影響について検討した。尾崎は、論文「津田事件の文脈――内務省検閲と岩波書店――」(『人文社会科学論叢』弘前大学人文社会科学部、2019年2月)を発表し、津田左右吉の著作が内務省により発売頒布禁止処分となった津田事件を、岩波書店所蔵資料等から丹念に辿りなおすことで、これまで明らかにされてこなかった当該事件の背景とその文脈を具体的に析出した。さらに尾崎は、岩波文庫の戦前戦後の検閲資料調査を踏まえて、内務省委託本調査レポート第18号「岩波文庫に対する検閲を通して見る、様々な検閲の主体」(千代田区立千代田図書館、2019年1月)を発表した。このレポートでは、内務省検閲を受けた岩波文庫のうち武者小路実篤『その妹』を取り上げ、戦前版から戦後版への本文の変容を指摘した。以上の研究成果のほか、長野県諏訪市風樹文庫・諏訪市図書館において岩波文庫・新書・全書等に関する資料調査と分析を行った。
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