2016 Fiscal Year Research-status Report
合衆国東海岸都市部におけるイスラム系移民の文学・文化活動
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16K13206
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
有馬 弥子 恵泉女学園大学, 人文学部, 教授 (70212652)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 英語圏文学 / アクタール、アヤド / ムスリム系アメリカン / イスラーム / ジェンダー / レバノン内戦 / 中東系アメリカン |
Outline of Annual Research Achievements |
日本アメリカ演劇学会で「ペンとヒジャブ――The Who & The Whatに見るムスリム系アメリカン女性の模索」を発表し、Akhtar作三篇におけるムスリム系アメリカンの女性のイシューを論じた。Breaking the Silence: Domestic Violence in the South Asian-American Communityの関連部分を発表に取り入れた。 ムスリム系アメリカンについての研究にあたり、南アジア系をめぐる諸問題やポストコロニアル状況についても研究する必要があり、本研究者の研究成果である南アジア系に関する研究を発展させるためにも英語圏文学としての英文学作品分析にも着手した。マードック作Jackson's Dilemmaにおける南アジア系出身と見られる主人公のディアスポラ状況とポストコロニアル状況について論文「ディアスポラとしてのジャクソンがもたらす攪乱と解放」を出した。 Banipul編集者Khachan氏の薦めでレバノン出身Zena El KhalilのBeirut, I love You: Memoir以外の作品"May Rose"(内Beirut Noir)とレバノン内戦を題材にしたSalma Abdelnour作品を入手した。Banipulを評した「『バニパル』が拓く現代アラブ文学」が掲載されている入手不可能となっている『すばる』2014年12月号を一冊とBanipulシリア出身作家特集号を同氏より譲り受けた。 29年度研究計画欄に記したYussef El Guindiの脚本Back of the ThroatをNYの演劇関係書専門店で入手した上、El Guindiの他三作品、30年度研究計画欄に記したアラブ系アメリカン最新文学作品、中でもパレスチナ系アメリカンの最新文学作品(Betty Shamieh作)等々も同書店で入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記したように、最新作品の入手については予定よりかなり早く多くの作品を入手することができた。 また、研究計画調書と交付申請書に記したSalaita著のArab American Literary Fictions, Cultures, and Politicsを前期中に精読する計画は実施できなかったが、Akhtar研究中にAkhtarとSalaitaが言及する作者で交付申請書に記したRabih Alameddineが作家どうしとして交流があることを知るに至ったことは予想外の最大の成果であった。補助事業期間内にAlameddine作品、特に研究計画調書作成時点で既に入手済みで調書に記した代表作Unnecessary Womanの精読は是非実施すべきだとの確信、またAkhtarとAlameddineを並行して研究する意義を確信するに至った。 しかし、28年度中にAyad Akhtarについての論文を1点所属機関以外の学会に投稿したものの12月末に不採用通知を受け取ったため、28年度中にAkhtarについての論文を発表するという目標には到達できなかった。 しかし、口頭発表については予定通り日本アメリカ演劇学会でAkhtarの三作品について発表した上、この発表が当初予測していなかった現代演劇研究会への入会につながり、更に現代演劇研究会で入会後一年以内に29年度12月に日本ではまだ研究事例のないAkhtar作品The Invisible Handについて発表する予定が決まったことも予測していなかった発展である。また、12月に多民族研究学会参加時に創設者の一人で日本アメリカ演劇学会での本研究者の発表を9月に聞いた方より多民族研究学会でも発表するよう薦められたことも予想外の発展であった。 上記五点を総合的に判断すると「区分(3) やや遅れている」に当たると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
変化発展した点は、日本アメリカ演劇学会での発表を機に現代演劇研究会に入会し、後者における研究に携わるようになったことである。後者においても、中東系アメリカンの諸作品とテーマ(中でもジェンダーのイシュー)を中心に研究を進める予定は今後も変わらない。29年度12月には同研究会において日本ではまだ研究事例がないAkhtar作品The Invisible Handについて発表することが決まっている。 これに先立ち29年度9月渡航時にAkhtarにインタビューできれば望ましいが、劇作家に直接インタビューすることについては同研究会に経験者がいるので参考にしたい。 変更点は、Huisman Linguistic & Literary Serviceの意向により同社に対する科研費使用を見送ることした点である。 課題は所属機関紀要以外の学会誌に掲載される論文の執筆に励み続けることである。今後、アジア系アメリカ文学研究会、多民族研究学会、英米文化学会、日本アメリカ演劇学会、現代演劇研究会になるべく頻繁に参加し刺激や指導を受ける。致命的な課題はこれらの研究会の日程が多くの場合重なることである。各研究会の知人にやむをえずメールなどの方法で研究内容について通信し合うこととする。 進捗状況欄に記したよう、Alameddine研究を本格的に開始する予定であること、多民族研究学会での発表も目指すこと等々、28年度中に新たな大きな発展があったために、これらと当初の予定のEl Guindi研究他を期間中どこまで実現できるかが課題である。このように研究テーマの見通しが大いに発展したことは予想外の成果ではあるが、Akhtar論文が発表できないと前に進むことができない。これら研究進展上の諸問題については、上記諸研究会に参加し他研究者との交流をこれまで以上に積極的にすすめれば有益な示唆を受けることができると思われる。
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