2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13207
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
柳沢 秀郎 名城大学, 外国語学部, 准教授 (40647989)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘミングウェイ / 蔵書研究 / marginalia / digitation |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の具体的内容は、キューバのヘミングウェイ博物館でデジタル撮影したアイテム1339点の「書き込み (marginalia)」資料の①判読、②分析と考察、③分析結果の編集と公開である。 また、その意義はこれら未公開資料を公開する受け皿を作ることで世界中のヘミングウェイ研究者に新たな一次資料を提供することであり、ヘミングウェイ研究に「蔵書研究」という新たな研究手法を提案する点で重要である。 当初設定していた、「デジタル化とPDF編集まで終えた現在未公開の書き込み資料に対して本格的な分析と考察を加える試みであり、この試みによってこれまで知られていなかったヘミングウェイの対人関係および知的活動の記録を明らかにする」という目的は、部分的には達成されたと言ってよい。 例えば、ヘミングウェイ所蔵の地図類を中心に判読を進めた結果、ヘミングウェイの私生活におけるドライブ移動の軌跡が部分的に明らかになった。「行動の作家」と称されたヘミングウェイが、アメリカの社会的文化的アイコンでもある自動車という移動媒体を、北米大陸の生家や別荘、米国最南端のキーウェスト、さらに海を隔てたキューバのそれぞれの拠点をどのように移動し、家族との記憶の痕跡として創作に反映させていたかについて、その諸相の一端を明らかにすることができた。この点については2017年4月開催の日本アメリカ文学会中部支部大会および同年6月キューバのヘミングウェイ博物館主催のアーネストヘミングウェイ国際会議にて発表した。 「研究実施計画」に照らすと29年度までに7割のアイテムを判読し終えている予定であったが、判読が極めて困難なアイテムもあり、5割の判読分析にとどまった。 平成30年度での完了が危ぶまれる場合には、引き続き科研に継続申請する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実施計画」に照らすと7割の判読を完了していなければならないが、実際は5割にとどまった。その理由は次の3点。①判読が極めて困難なアイテムに多くの時間を割かねばならなかった②校務により、長期の海外出張が不可能だった③情報インフラのためか、電子メールでのヘミングウェイ博物館との円滑なコミュニケーションが図りづらいというキューバ側の事情もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
この平成30年が研究の最終年度であるため、判読作業に努力を傾注する。また、現在進めているNHKとのプロジェクト化を実現し、判読成果を日本のアーカイブとして発信できるよう整備していきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、当該年度において、プロジェクトに関わるキューバ海外出張の調整ができなかったことによる。 しかしながら、次年度はキューバの博物館とのミーティングのための訪玖渡航費用も含め、プロジェクトの成果を配信する媒体に助成金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)