2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13208
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田中 琢三 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (50610945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 愛 法政大学, 社会学部, 准教授 (80557281)
中村 翠 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 講師 (00706301)
福田 美雪 (寺嶋美雪) 獨協大学, 外国語学部, 専任講師 (90632737)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フランス文学 / 文献学 / 政治思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度となる平成28年度は、研究実施計画に従って、研究代表者、研究分担者の各々がエミール・ゾラの作品におけるモニュメントに関する研究を進めた。 研究代表者の田中は、イデオロギー色の強い後期ゾラの小説『ローマ』(1896)を取り上げ、この作品に登場するローマのモニュメント、特にヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂がどのように表象されているのかを、おもにゾラの反カトリック思想と関連付けながら分析し、その成果を『お茶の水女子大学 人文科学研究』第13巻に論文『ゾラ『ローマ』におけるサン・ピエトロ大聖堂』(査読有)として発表した。 また、研究分担者の中村は、ゾラの『ルーゴン=マッカール叢書』の第8巻『愛の一ページ』(1878)において、新オペラ座とサントーギュスタン教会というパリのモニュメントが、作品の時代設定と齟齬をきたしながらも描かれていることに注目して、その潜在的な意味をゾラの書簡や草稿等から検討し、その成果を『STELLA』第35号に論文『モニュメントのアナクロニスム:ゾラの『愛の一ページ』をめぐって』(査読有)として発表した。 そして、2016年12月22日に、お茶の水女子大学において、北海道大学准教授の竹内修一氏の講演「アンドレ・マルローのパンテオン(1964 / 1996)」を開催した。竹内氏は、パリの代表的なモニュメントのひとつであるパンテオンで1964年に挙行されたジャン・ムーランの国葬を紹介するとともに、葬儀の際に行われたムーランに対する作家であり、政治家でもあるアンドレ・マルローの追悼演説を詳細に分析して、フランス第五共和政初期のパンテオン葬が有する政治的、イデオロギー的な意味を明らかにした。また、この講演の前後に、2017年10月に開催予定のパンテオン葬に関するワークショップの打ち合わせを竹内氏と行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の1年目にあたる平成28年度は、研究代表者、研究分担者のそれぞれが、モニュメントに関連する文献の収集、あるいはフランスへの調査旅行などを実施することによって、2年目以降の研究に向けて、その基盤となる作業をある程度完了することができた。また、3年目に開催予定のシンポジウムの準備の一環として、文学におけるモニュメントの表象をめぐってどのような問題を設定しうるのかを各人が検討した。 また、公刊した論文では、エミール・ゾラの小説に登場するモニュメントの思想的、象徴的あるいは物語的な意味を探ることによって、ゾラの作品におけるモニュメントの機能の一端を明らかにした。具体的には、この作家が、『ローマ』においては、モニュメントが喚起する記憶やイメージを、自らの政治的イデオロギーを正当化するために用いていること、そして、『愛の一ページ』においては、モニュメントの視覚的効果によって描写あるいは物語にダイナミズムを生み出そうとしていることが確認できた。 また、竹内修一氏によるアンドレ・マルローとパンテオンに関する講演を実施することで、パンテオン葬という観点から、文学者とモニュメントの関係に新たな光をあてることができただけではなく、将来的に竹内氏とパンテオンという国家的なモニュメントに関する共同研究を行う道筋が開かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施した研究を踏まえながら、あるいは継続しながら、平成29年度は、エミール・ゾラの作品だけではなく、19世紀から20世紀にかけての近現代のフランス文学、さらには絵画、写真、映画などさまざまなジャンルの芸術におけるモニュメントの表象を分野横断的に比較・検討していく。初年度と同じく研究代表者、研究分担者のそれぞれが個別にこの研究を実施していくが、それと同時に、共同研究のメンバー全員が協力して、平成30年度中に開催を予定しているモニュメントの表象をめぐるシンポジウムの準備を、パネリストの人選や会場の選定なども含めて、より具体的に進めていく。 また、平成29年10月に名古屋大学で開催される平成29年度日本フランス語フランス文学会秋季大会において、竹内修一氏をコーディネーター、研究代表者の田中らをパネリストとするフランス第三共和政および第五共和政のもとで行われた文学者のパンテオン葬をテーマとしたワークショップを実施する。 さらに、『ゾラ・モニュメント事典』(仮題)の刊行を目指して、研究代表者と研究分担者が協力し、ゾラの著作にどのようなモニュメントがどのようなかたちで登場しているのかを網羅的に調査し、データベース化していく予定である。
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Research Products
(4 results)