2016 Fiscal Year Research-status Report
色語の習得が難しい理由――色語彙システム創発と発達過程の多言語比較研究
Project/Area Number |
16K13224
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 むつみ 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (60255601)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心理言語学 / 色語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2~4歳児を対象にして、典型色である赤・黄・緑・青・紫・茶・オレンジ・ピンクの8色について、理解・産出課程がどのように進むのかについて、継続調査を実施した。さらに、典型色を獲得した幼児がその後、どのような過程を経て大人の色語彙システムに近づいていくのか、その過程を明らかにするため、典型色について理解・産出ともに8色全問正解した幼児に対し、93色産出調査を継続して行った。その結果、多くの幼児が典型色を獲得した後に日本語特有といわれる色語である水色・黄緑・灰色・肌色といった色語を回答するようになっていく過程をデータとして集めることができた。また、これらの新たな色語が獲得される際には既知の色語が用いられていた色に対しても過剰に汎用するなどの現象が観られ、新しい色語が単に記憶・追加されるだけではなく、色語のシステム全体を再編成する形で編入されていくことを示しており、より詳細な分析によりその過程を明らかにすることができるデータがまとまりつつある。さらに、調査過程において、「わからない」という回答について個人ごとに頻度の違いや色ごとの差が見られると共に、性別による顕著な傾向があることも明らかとなり、自己の色語に対するメタ認知の問題としても興味深い結果が得られた。 さらに、エチオピアのシダーマ語およびウガンダのクプサピニ語の両語圏において継続調査に用いたものと同様の93種類の色チップを用いた予備調査を行った。しかし、同チップを用いた調査では、得られる色語の種類が少なくかつ被験者への負担も大きいことから、典型色を含む形で39種類にチップの数を減らし本調査を行いデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保育園における継続調査が順調に終了し、93色に対する回答をデータとして収集することができた。フィールドワーク調査については、エチオピアのシダーマ語、ウガンダのクプサピニ語、両語圏において色チップを用いた予備調査を踏まえ、より精緻に本調査をできるよう刺激セットを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度以降は2016年度保育園において集めた色語に関する継続調査のデータ整理およびそれらの分析を進める予定である。さらにシダーマ語、クプサピニ語両語の色語に関する調査結果の分析も併せて進める。
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Causes of Carryover |
2016年度はデータ収集に注力したため、被験者への謝金等の人件費・謝金の支出が主であった。しかし、データ分析のための分析補助の人件費を使用しなかったため、今年度は使用する必要がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度2017年度は2016年度に集めたデータのデータ分析およびその成果報告を行うため、分析補助の人件費および旅費に使用予定である。
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Remarks |
招待講演:2017年2月4日:「ことばの獲得と学び・思考」千葉県聴覚障碍研究会第53回研究会 2017年1月28日:「乳幼児の語彙の習得」近畿教育オーディオロジー研究協議会冬の学習会 2017年1月11日:「探究人になるために」大竹市・廿日市市小学校長会研修会
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Research Products
(4 results)