2016 Fiscal Year Research-status Report
アーカイブの活用による授受表現の新用法と新形態の普及に関する研究
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16K13231
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
尾崎 喜光 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (10204190)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 授受表現 / アーカイブ / テレビ番組 / 言語変化 / イントネーション / 小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
授恵表現の新用法と新形態の普及について、主としてテレビ番組や新聞のアーカイブをデータソースとして活用し、過去数十年に渡っての動態を明らかにすることを目的とする。 注目する表現は、①質問形式による依頼表現としての「~してもらえる?」に対する「~してもらっていい?」のような表現(すなわち補助動詞「もらう/いただく」を可能形にした表現に対する「もらう/いただく+て+いい」のような構成をとる表現)、②話し手に利益をもたらすわけではない状況において相手に手順や順路等を教示する際、相手の動作を含む従属節末尾を「~たら」とするのに対する「~てもらったら/~ていただいたら」とするような「もらう」「いただく」を含めた表現、③「~させる」が本来妥当である状況において(典型的には大人から子供に対し何らかの行動を行なわせる状況)、「~てもらう」のように「もらう」を含めて表現する用法、④従来下降イントネーションが使われていた文末の「~てください」を上昇のイントネーションにより表現する用法である。 このうち上記①については、小説の会話部分においても新しい表現がどのように出現するかを明らかにするため、現在50代・40代・30代である作家12名の最近の作品を同様に調査した。このうち50代の作家については40代・30代に発表した作品についても、また40代の作家については30代に発表した作品についても同様に調査し、同一作家の中で時代や加齢に伴う変化があるのかないのかを明らかにすることもめざした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これらの動態を明らかにするため、公益財団法人放送番組センターが運営する「放送ライブラリー」(横浜市)において、過去に放送されたテレビ番組を視聴し、該当する表現が出現した場合に発話(文)を文字化しデータベースとして蓄積した。 対立する従来の表現も含め一年間調査した結果、上記①については191件、②については3件、③については4件、④については536件のデータを蓄積し、今後の分析に備えた。 なお新聞の活用については、「日本新聞博物館」(横浜市)において、地方紙に掲載された過去の記事(生活面)をマイクロフィルムにより閲覧し調査する予定でいたが、年度途中のニューアルオープンに伴いマイクロフィルムは保管しない方針となったことから、これによる調査は断念し、テレビ番組の調査に集中することとした。 小説の会話部分の調査については、第一段階としてアルバイタに下読みをさせて該当箇所にマークをさせた。現在50代・40代・30代の作家について、各世代男性2人、女性2人を選び、一作家2作品を調査した。このうち現在50代の作家(男女計4名)については40代・30代に発表した作品も同様に調査するとともに、現在40代の作家(男女計4名)についても30代に発表した作品も同様に調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
「放送ライブラリー」での調査は2年次も継続し、データをさらに蓄積して分析に備える。注目した表現のうち上記①については、従来の表現は多数得られたものの新しい表現については思いのほかデータが得られなかった。依頼場面が多数得られると見込んだテレビドラマを中心に調査したがこうした結果であったことをふまえ、2年次は調査対象とする番組のジャンルについて再検討しつつ調査を継続する。 小説の会話部分の調査については、現在60代・70代の作家の作品についても同様に調査するか否か現在検討中である。1年次までのデータにとどめる場合は、アルバイタに下読みさせマークさせた箇所について研究代表者が確認し、該当表現をデータベース化して分析に備える。
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Causes of Carryover |
調査でデータ入力に用いていたノートPCが経年劣化により動作が不安定になり始めた。次年度以降安定した環境で調査を継続するためにはノートPCを更新する必要がある。次年度それを購入する経費の一部にあてるため、1年度に残額を生じさせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ノートPCを1台購入する。
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