2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13233
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 朗 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80177790)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 意味論 / 価値・評価を表す言語表現 / 合成性の仮説 / 日英語比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
菊地(2016)「価値と合成性」(菊地他編『言語学の現在を知る26考』研究社)に示した、文構造と言語表現が表す価値評価の相互関係に関する仮説の妥当性を、より広範囲な英語の諸構文に照らし合わせて検討する作業を行った。また、英語を中心に検証を進めてきたが、当該仮説を日本語にも拡張した場合、どのような帰結が得られるかを検討した。現時点では、各語彙による違いはあるが、文構造に基づく表現の価値の計算については、日本語と英語では違いはまったく見られないという結論に至っている。 より具体的には次の3点が研究の概要である。(1)「優れたピアニスト」(肯定的価値)/「下手なピアニスト」(否定的価値)のような表現の価値は句構造とそれを構成する語彙の内在的な価値指定に基づいて合成的に決定され、その仕組みは普遍的であると考えられる。(2)「汚染を広める」(否定的価値)/「汚染を阻止する」(肯定的価値)のような違いをもたらす語彙意味の性質には動詞等のアスペクトの性質(時間的性質)と連動している。(3)英語のan angel of a girlや日本語の「お父さんのバカ」など、それぞれの言語には固有の価値を表現する構文パターンがあり、その記述・説明には構文文法的な扱いが必要になると思われる。 なお、上記のような研究の成果についてすみやかに公表すべきであったのであるが、諸事情により、本報告の年度では公表できる形にまとめることができなかった。最終年度に当たる本年度中には、学会発表や論文の形で公表する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題における個別の問題のいくつかについては、調査・分析をすることができたと自己評価しているが、それを他の研究者の評価を受けられる形で公表するまでには至らなかったのがが事実である。 理由としては、(1)一時的に体調を崩し、本課題の研究に精力的に取り組めない時期が長かったことと、(2)他のタスクが発生し、予定していたエフォート率で取り組むことができなかったことがあげられる。本年度は最終年度に当たるので、研究資金に見合うだけの成果をあげるよう、努力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、博士論文(論文博士)の執筆中であるが5月中には完了予定である。それが終了後、本課題について、すでにほぼまとめがついている部分について、国際学会等で口頭発表をする予定である(応募済)。 また、2019年2月~3月になるが、「言語変化・変異」についてのワークショップで、研究課題から派生してできてきた課題について発表を行うことになっている。内容としては、政治的言説の価値を含んだ表現についての言語学的分析である。 いずれにしても、未開拓と思われる分野の内容であるので、他の研究者たちからの反応によって価値がある研究となるかどうかが分かれると予想される。高い評価を得た場合は、論文の形にしてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
一時的に体調が崩れ、精力的に研究に取り組むことができなかった。また、新たな支出を伴う資料や設備を用いずとも研究を進めることができたことも理由として挙げられる。 最終年度の本年度は、これまでの成果と従来研究との比較の上で独創性や考えられる帰結の検討が必要となるので、文献収集とその整理に経費が必要となる。「物品費」・「人件費・謝金」の経費がそれに充てられる。また、成果の公表のための経費も必要となると思われ「旅費」の経費がそれに該当する。
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Research Products
(1 results)