2018 Fiscal Year Annual Research Report
Toward a theory of Case and Agreement in terms of functional fission, fusion and ordering
Project/Area Number |
16K13235
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
岡 俊房 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (00211805)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 素性 / 一致 / 非顕在的移動 / 束縛 / 転送 / 線形化 / 位相 / ラベル |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度に引き続き、ラベル付与そのものを不要にする、素性一致と位相(転送)のシステムを構築することに取り組み、ラベル理論より細かく、より広く現象を説明すべく理論を精緻化して対称性(あるいは非対称性)に基づく主語の統語的位置を説明するとともに、素性一致操作を非顕在的主要部移動とする仕組みの精緻化および非顕在的wh移動現象および束縛現象に適用する分析の精密化を行った。 30年度の新たな理論的提案は、次のとおりである。(1)素性一致において予期される介在効果が見られない場合には、フリーライド(ただ乗り)が働く。これにより、通常後置できない主語が許されることになる。(2)線形化のメカニズムを素性一致に基づいて構築した。これにより、Kayne (1994)等の線形化理論からラベル(およびプロジェクション)を排除することに成功し、後置主語等の語順が正しく捉えられることになる。(3)素性一致のプロセスを、主要部どうしの探査と併合とそれにより形成された統語体の転送と削除という一連の操作(いわば非顕在的主要部移動)として定式化し、NS(狭い意味での統語部門)を基本的な併合操作に限定することに成功した。(4)多重Wh疑問文等に見られる元位置Wh句はしばしば非顕在的Wh移動により分析されるが、これを非顕在的主要部移動として定式化し、非局所的な相互作用である演算子合併が局所的に捉えられることになる。(5)この分析をさらに束縛現象(照応関係のみならず、同一指示・離接指示関係も)に応用し、言語の下位モジュールを想定することで言語を複雑化する束縛理論を解体した。これは、言語の進化も射程に入れた極小主義プログラムのもとで強く求められる単純化であり、統語理論に進展に新たな方向性を与えるものである。
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