2017 Fiscal Year Research-status Report
訳官使と通信使の統合的研究―儀礼の空間とモノを媒介として―
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16K13282
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
池内 敏 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90240861)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 訳官使 / 朝鮮信使 / 近世日朝関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
訳官使については、(1)韓国国史編纂委員会所蔵の訳官使関係資料を引き続き解読を進めることに努め、(2)訳官使接待の空間構成の分析を継続して進めるために、雪舟画への注目を継続した。それは前年度からの継続課題であった対馬藩以外の諸大名家における床間飾・掛軸の画題分析と併行して進めることを意識的に追究した。 同じく日朝間におけるモノの交流にかかわっては、近世初頭の相国寺僧鳳林承章の日記『隔冥記』中に見える朝鮮産品を継続して追究し、対馬藩経由で京都にもたらされた朝鮮産品の行方について少しずつ事例追加を重ねてきた。 それら前年度以来の研究成果については、国内外でいくつか口頭発表を行い、とりわけ近世日朝関係史を専門としない研究者からの質疑応答を踏まえて新たな知見に触れることができた。 なお、本研究課題は、基本的には訳官使と朝鮮通信使との統合的理解をすることを通じて近世日朝関係史研究に新たな展開を求めるものである。一方で、これまでの研究の展開を踏まえてさらに近世日朝関係史一般への研究展開を意図するときに、訳官使・朝鮮通信使以外の近世日朝関係史の諸事象への配慮が必要と考えた。そこで今後の研究展開のための試掘的調査として、試みに近世日朝境界領域における交渉の姿を参照系として取り上げることとして、近世~近代における漁業史の展開にかかわる資料の収集を試みた。そこで、具体的には、江戸時代・鳥取藩領米子町人であった大谷家文書中にみえる鬱陵島海域への出漁事例、明治年間における島根県漁業における出漁(海域・漁獲対象)の記録のされ方を調査してみた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度については、7月末までのあいだ指導する大学院学生のうち一名が指導困難な状況に立ち至り、所属する研究室教員・所属研究科執行部および両親と相談を重ねることとなった。7月に病気休学の措置をとったものの落ち着いて職務遂行ができる状況に完全に戻れたわけではなかったため、前年度までに収集した資料の解読作業も当初の方針通りには進んでいない。もちろん、可能な限りの努力を重ね、年度後半には少し進行状況を回復すると共に、最終年度へ向けての企画を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集してきた訳官使・朝鮮通信使関係資料および対馬藩政資料を読み解いて、当初計画に掲げた訳官使と朝鮮通信使の統合的理解へと進みたい。 そこで、(1)次年度以後の研究展開とも関わって、これまでの研究成果を踏まえてミニシンポジウムを9月はじめに開催する。報告者は、訳官使研究を進めている島根県立大学・石田徹准教授と池内の両名が確定しており、さらに数名追加する可能性がある。(2)11月末に開催予定の国際シンポジウム(名古屋大学と島根県立大学との共催予定)で関連するセッションを設け、そこでも研究の整理を図る。(3)少なくともこれまで調査してきた訳官使関連資料については、まとまったかたちで報告書を作成する。(4)以上を踏まえて、近世日朝関係史研究から近世東ユーラシア史研究への展開を展望しつつ、次年度以後の研究展望を行う。そのために、漁業史研究へも意識的に配慮を行い、それら全体の統合的理解へ至る筋道を検討する。
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Causes of Carryover |
2018年9月に本研究課題の中間総括を行うミニシンポジウムを開催予定している。そこに国内外から報告者を招待する予定にしている。また少なくともこれまで進めてきた訳官使研究に関わる資料については報告書を作成する予定にしている。これらミニシンポジウム開催(報告者の旅費・謝金等)および報告書作成にかかわる費用を平成30年度分の研究費と合算して活用する。
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Research Products
(4 results)