2016 Fiscal Year Research-status Report
仏教石窟壁画と題記銘文の比較検討によるウイグル仏教のトレンドの分析
Project/Area Number |
16K13286
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松井 太 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10333709)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ウイグル / 仏教 / 石窟 / 壁画 / 題記銘文 / 信仰 / トレンド |
Outline of Annual Research Achievements |
中央アジア東部地域の仏教石窟遺跡に遺存する壁画の美術史的検討と,石窟に残された古ウイグル語銘文の文献学的解読とを比較・融合させる学際的なアプローチにより,主に西暦7ー10世紀頃の仏教壁画に表現される種々の仏教的思想が,後世(10ー14世紀)のトルコ系ウイグル族により如何に受容され「トレンド」となったか,という問題を解明することを目的とする。 具体的には,中央アジア東部地域でも,研究条件の良好な敦煌石窟(中国甘粛省)を主要な対象とし,多数の古ウイグル語題記銘文が集中して記される特定の窟群を調査・検討する。それらの題記銘文を包括的に解読すると同時に,当該窟の仏教壁画の内容理解を進める。これらの成果を既知のウイグル語仏教典籍類と比較することで,ウイグル仏教徒の信仰上のトレンドを解明する。 今年度,研究代表者は,これまでに集積してきたウイグル語題記銘文について,出版に向けてとりまとめ作業を行なうとともに,題記銘文の集中する特定窟(特に楡林窟第3窟・第4窟・第12窟)に関する仏教的・美術史的基礎情報を収集し,その他のウイグル語仏教典籍の研究成果とも勘案して,モンゴル時代のチベット仏教のウイグル仏教徒に対する影響を想定している。 また,敦煌で開催された国際学会「2016敦煌論壇:交融与創新:紀年莫高窟創建1650年国際学術研討会」に研究協力者の菊地淑子を派遣し,莫高窟217窟の調査成果を報告させるとともに,短期間の現地調査を実施させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象とする敦煌の仏教石窟壁画の美術史的分析,およびウイグル仏教徒の信仰を反映する題記銘文資料の文献学的分析の双方とも,順調にデータを収集している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の集積してきた敦煌石窟のウイグル語題記銘文資料はまもなく刊行予定である。これを石窟壁画の仏教学・図像学的分析に供することで,研究が飛躍的に推進できることが予想される。
|
Causes of Carryover |
2016年8月に敦煌研究員が開催した国際学会「2016敦煌論壇:交融創新:紀念莫高窟創建1650週年國際學術研討會」とあわせて,その前後に敦煌石窟の現地調査を予定していたが,研究代表者が本務校での業務により調査時間を確保することができないため,8月の現地調査を中止せざるを得なくなったため,その経費が残額となったものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度も敦煌における1ー2週間の現地調査を予定しているので,調査に必要な機材類(照明器具・タブレット類)および石窟美術関係の図録など,事前の準備に必要な物品の購入に充てる予定である。
|