2017 Fiscal Year Research-status Report
仏教石窟壁画と題記銘文の比較検討によるウイグル仏教のトレンドの分析
Project/Area Number |
16K13286
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松井 太 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10333709)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウイグル / 仏教 / 石窟 / 壁画 / 題記銘文 / 深更 / トレンド |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度,研究代表者の松井太は,本科研およびこれに先行・連動する各種研究プロジェクトによる敦煌石窟のウイグル語仏教巡礼題記銘文の現地調査成果をまとめた「敦煌石窟ウイグル語・モンゴル語題記銘文集成」(『敦煌石窟多言語資料集成』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所,2017, pp. 1-161)を刊行した。これは,松井がこれまでに調査し得た莫高窟・楡林窟・五箇廟など約150窟に遺存する,合計283条のウイグル語題記銘文について,校訂テキスト・和訳・文献学的註解,さらには所在データや先行研究などの諸情報を提示したものである。これによって,今後の各石窟の壁画からうかがわる仏教教義・思想と,10~14世紀のウイグル人仏教徒巡礼との関係を考察するための基礎的作業を整えることができた。 特に,本課題の目標とするウイグル仏教徒の信仰上のトレンドの解明に際しては,敦煌莫高窟第217窟における題記銘文と壁画内容が重要な検討対象となる。この点について,松井は,前述の「敦煌石窟ウイグル語・モンゴル語題記銘文集成」論文所収のテキスト校訂に基づき,この第217窟に長期滞在して題記銘文を遺したウイグル仏教徒の活動を,その他の題記銘文ともあわせて再構成することができた(Matsui, Remarks on Buyan-Qaya: a Uigur Buddhist Pilgrim to Dunhuang. In Festschrift for Prof. Klaus Roehrborn dedicated on his 80th birthday, forthcoming)。 ただし,敦煌石窟美術を専攻する研究協力者と同道しての敦煌石窟の実地調査は,諸般の事情から実施できなかったため,各種の敦煌石窟の仏教壁画に関する美術史的・仏教学的な研究成果のサーベイ,および各種の研究情報の交換に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
敦煌石窟美術を専攻する研究協力者に健康上の問題が生じた結果,両名が同道して行なう予定であった現地調査や,ウイグル語題記銘文資料と石窟美術の比較検討などの作業が,今年度いっぱいを通じてほぼ不可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の主旨に照らして,専門的な知見を有する研究協力者との共同作用は必須であるので,来年度にも継続する必要がある。また研究協力者は,療養中にも可能な範囲で文献サーベイを行なってきたが,それらを石窟の現地調査により確認・検証がある。 このような事情に鑑みて,本課題のタスクを着実に遂行するため,期間を1年延長する予定である。
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Causes of Carryover |
当初は,研究協力者と同道して敦煌石窟の現地調査を予定していたところ,研究協力者の健康上の問題から現地調査が不可能となったため,渡航旅費や通訳・車輌借上費が未使用となったものである。本課題においては現地調査が不可缺であり,他の支出に充てることは目的にてらして適当ではないので,平成30年度に延期して実施する予定である。 また,当初は平成30年度に研究終了を予定していたが,上記の理由で研究協力者と共同で行う予定の各種検討作業も,現時点では遅延していることから,研究期間終了を1年間延長して平成31年度とし,十分な現地調査および分析検討を行なう予定である。
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