2018 Fiscal Year Research-status Report
仏教石窟壁画と題記銘文の比較検討によるウイグル仏教のトレンドの分析
Project/Area Number |
16K13286
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松井 太 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10333709)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウイグル / 仏教 / 石窟 / 題記銘文 / 仏教絵画 / 信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の松井太は,昨年度に刊行した「敦煌石窟ウイグル語・モンゴル語題記銘文集成」(松井太・荒川慎太郎(編)『敦煌石窟多言語資料集成』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所,2017, pp. 1-161)に基づき,題記銘文に反映されるウイグル仏教徒の巡礼活動を検討した。その結果,①モンゴル時代敦煌地域のウイグル仏教徒とキリスト教徒との社会的関係,②さらに広範な河西地域におけるウイグル仏教巡礼の実態(巡礼期間や巡礼者の構成・宗教実践など),③ウイグル仏教への中国民間信仰の浸透,④ウイグル仏教の僧職制度に対するトカラ(クチャ)仏教の影響,などを解明した。その内容は2本の研究論文として刊行し,また国際学会で報告した。さらに関連する研究成果として,西暦10~11世紀頃のウイグル仏教徒とマニ教徒との共存関係を示す古代ウイグル語文書を検討し,中文の研究論文として発表した。 上記②では敦煌莫高窟第217窟のウイグル語題記銘文を主に扱った。この莫高窟第217窟については,研究協力者の菊地淑子が,造営の主体となった敦煌有力者をめぐる諸問題と,その造営年代に関する研究論文2本を発表した(菊地淑子「囲繞敦煌莫高窟第217窟的開鑿与重修之歴史」『形象史学』2018-2, 社会科学文献出版社,印刷中;菊地淑子「敦煌莫高窟第217窟供養人題記再論」南京大学中華文化研究院・中国天楹文化研究院(編)『絲路文化研究』第3輯,商務印書館,2019, 印刷中)。また,菊地は敦煌石窟の現地調査を実施し,漢文の供養者題記を観察し,当該窟の年代論に関する情報を収集するとともに,本石窟が反映する仏教信仰内容に関する発願文を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度を通じて,敦煌石窟美術を専攻する研究協力者に健康上の問題が生じた結果,両名が同道して行なう予定であった現地調査や,ウイグル語題記銘文資料と石窟美術の比較検討などの作業が不可能となったため。 所期の目的を達成するため,研究期間を1年延長している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は,敦煌現地とあわせて,欧州所蔵のウイグル仏教石窟壁画資料の調査を行なう予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に研究協力者の健康上の理由から十分な研究活動ができなかったことから,研究期間を1年延長したため。 平成31年度の使途は,研究代表者・研究協力者の資料調査・現地調査のための旅費および関係資料購入のための物品費を主に想定している。
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