2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13287
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| Research Institution | Josai University |
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Principal Investigator |
飯尾 唯紀 城西大学, 現代政策学部, 准教授 (80431352)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | ハプスブルク君主国 / ハンガリー / 政治統合 / ティサ川 / ドナウ川 / 河川生態系 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世のヨーロッパ東部における政治的統合過程を、自然環境要因に着目して考察することを目的としている。分析対象は、17－19 世紀カルパチア盆地の水郷地域に設定した。近世のカルパチア盆地では、ドナウ河・ティサ河の２大河川流域生態系を中心に多様な生業が営まれ、生産・消費のサイクルに対応した重層的共同体とその広域的連携が展開した。17 世紀末から、ハプスブルク家君主による政治統合の試みが続くが、それは広域的な環境課題への住民の要請に応えて進められた側面がある。この点に着目して、近世ヨーロッパ東部の政治統合や地域特性を、政治・社会史の観点のみでなく環境史の視点を組み込んで検討することが本研究の狙いであった。
初年度に当たる28年度には、主に文献・資料状況の調査と予備的なフィールドワークを実施した。この結果、次の点が明らかとなった。
（１）文献・資料状況： 本年の現地調査過程で、主な基礎的文献収集を終えることができた。環境史に関しては、ハンガリーの歴史研究は未だ極めて手薄であり、民俗学者や郷土史家による研究が中心であることが確認できた。また、僅かな研究のうちでも、重点は19世紀以降におかれ、本研究が扱う19世紀以前の研究成果は極めて限れていることもわかった。一方、史料状況をみると、法令などの既知の規範史料でも利用できる箇所は多く、18世紀には絵地図や所領文書も飛躍的に増加することから、研究の余地が多いことも確認できた。
（２）フィールドワーク： ハンガリー北東部の河川流域の農業事業者などから現在の生業の多様性や河川整備の影響について聞き取り調査を行った。当地域では、河川整備前の河川利用の痕跡なども残されているとの情報も得られた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近世の政治統合と河川生態系の関連の解明にむけ、本研究では、３回の教会・地方政庁文書館調査と、２地点のフィールドワーク実施を計画した。初年度にあたる28年度は、基本的な文献収集と史料調査、２回のフィールドワーク実施を計画していた。
このうち、基本的な文献収集については、概ね順調に行うことができた。また春・夏に計画したドナウ川、ティサ川流域のフィールドワークについても、いずれも実施することができた。ただし、日程調整がつかず当初予定していた２箇所から１箇所へと調査地を限定せざるをえなかった。農業事業者の聞き取り等は、順調に行うことができた。さらに、文書館調査はフィールドワークと並行して実施することができた。ブダペシュトでの２つの教会文書館調査で豊富な関連資料が見つかったため、地方の文書館調査は次年度以降の実施へと変更した。
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| Strategy for Future Research Activity |
本年度以降、初年次に得られた文献調査の結果を内外の学会等で報告し、成果の一部を雑誌論文に発表する。また、並行して、現地の史料調査とフィールドワークを予定通り継続実施する。特に２年目以降は、調査地をハンガリー国内のみでなくスロバキアのドナウ川、ティサ川沿岸まで広げる。
本年度後半からは、これらの調査結果を踏まえて、近世カルパチア盆地の河川流域について得られた結果を総合し、他の自然環境（山岳地域や海洋沿岸地域）と比較可能な近世ヨーロッパ史の説明モデルの提示を試みる。モデル提示においては、これまでの政治・経済史的な歴史的地域把握の枠組みの妥当性、有効性の検証を試み、国内外の研究者との研究会での意見交換を行うことを予定している。
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