2018 Fiscal Year Annual Research Report
Speed of social changes in the prehistoric Near East
Project/Area Number |
16K13290
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前田 修 筑波大学, 人文社会系, 助教 (20647060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 考古学 / 西アジア / 人類史 / 社会変化 / 物質文化 / 先史時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究期間の最終年度にあたるが、当初の研究計画のとおり、人類史における社会変化の速度に関して、西アジア先史時代における物資交易の時間的変化を解明することに注力した。同時に、トルコ共和国バトマン県のハッサンケイフ・ホユック遺跡において、発掘資料の研究をおこなった。おもな成果は以下の通りである。 1.トルコ共和国、ハッサンケイフ・ホユック遺跡出土の石器資料を研究し、層位学的証拠および放射性炭素年代をもとに、狩猟採集社会から農耕牧畜社会への移行期における石器製作技術・石器型式の時間的変化をあきらかにした。 2.アスファルトの交易研究として、トルコ共和国において天然アスファルトの産地でフィールドワークを実施し、産地資料を採集した。同時に、名古屋大学においてガスクロマトグラフィー分析法、炭素同位体分析法によって遺跡から出土したアスファルトを分析し、それらに含まれる炭化水素化合物の組成を産地で採集した天然アスファルトと比較することで、アスファルトの産地同定をおこなった。 3.石材として利用された黒曜石の交易研究を進め、特に、レヴァント・メソポタミア地方においてアルメニア産黒曜石の流通が普及する過程をあきらかにした。また、英国マンチェスター大学の研究者と共同研究を進め、西アジア全域において黒曜石交易のパターンが時間とともに大きく変化することがあきらかになった。その研究成果をバルセロナで開催された国際学会で発表するとともに、英文ジャーナルにおいて発表した。 本課題の研究期間全体を通じて、西アジア先史時代の約8千年間における人口、生業、遺構、遺物に見られる社会変化の速度を検討した。今後さらに検討する必要がある課題も見つかったが、総論として、この時代の社会変化の速度は従来考えられてきたものよりもかなり遅く、数千年をかけて徐々に変化が起こったものであることをあきらかにした。
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Research Products
(9 results)