2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13291
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (20183246)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 考古学 / 美術史 / 鏡 / 漢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2~3世紀の中国における神獣鏡の作者それぞれに焦点を当て、かれらの作鏡動向をもとに神獣鏡全体の新しい編年を組み立てるとともに、日本の前期古墳から出土する三角縁神獣鏡の「陳氏」や「張氏」らの作鏡動向と対比しようとするものである。 今年度は、後漢時代の神獣鏡を中心に図像と銘文にかんする資料を収集した。日本では兵庫県立考古博物館に寄贈された千石唯司コレクションと京都大学総合博物館所蔵の日本出土鏡、中国では浙江と上海の個人コレクションを重点的に調査した。前者については、2017年4月にオープンする兵庫県立考古博物館加西分館「古代鏡展示館」の展示と図録に成果の一部を発表し、後者については、「紀年銘をもつ神獣鏡の新例」(『史林』第99巻第5号、2016年)として成果の一部を公刊した。また、古代の鏡全体を対象とする啓蒙書の『鏡が語る古代史』(岩波新書、2017年5月刊行予定)を執筆した。そこでは「鏡の使われ方」「人びとの心情を映す―前漢鏡に刻まれた楚歌」「〝プロパガンダ〟としての鏡―儒家思想のひろがりと王莽の台頭」「自立する鏡工たち―後漢前期に生まれた淮派」「民間に題材を求めた画像鏡―江南における呉派の成立」「幽玄なる神獣鏡の創作―四川における広漢派の成立」「うつろう鏡工たち―東方にひろがる神獣鏡」「政治に利用された鏡―「銅鏡百枚」の謎を解く」という章を設け、銘文と図像文様の両面から、姿見の道具として用いられた鏡が、政治の道具として用いられるにいたるプロセスを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は論文の形で成果を積み上げていく計画であり、成果の一部は『史林』論文として結実したが、さらに単著の『鏡が語る古代史』(岩波新書、2017年5月刊行予定)として成果がまとめられたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引きつづき鏡の高精細画像を収集し、研究成果をひろく発信してゆく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由のひとつは、2月に開催した国際共同研究会において、台湾からの招聘者が別の研究費から渡航費を支出したから、ふたつめに京都大学総合博物館と藤井コレクションの資料調査を京都で実施したため、旅費が不必要になったから、みっつめに3月に予定していた国際ワークショップが、招聘者の都合で平成29年4月にずれこんだからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延期になった国際ワークショップを4月に実施する。また、5月に出版される本研究関連著書の『鏡が語る古代史』を買い取り、レビューを受ける。これで前年度に予定されていた使用額はなくなるはずである。 平成29年度の使用計画は、当初計画の通り実施する。
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Research Products
(5 results)