2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Limits of Run-Up Modern-day Marine and Brackish Diatoms
Project/Area Number |
16K13294
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Research Institution | Tohoku History Museum |
Principal Investigator |
柳澤 和明 東北歴史博物館, 学芸部, 上席・主任研究員 (90754557)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 貞観地震・津波 / 多賀城跡 / 海生種珪藻 / 汽水種珪藻 / 遡上限界 / 生育限界 / 砂押川 / イベント堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
『日本三代実録』貞観11年(869)5月26日条からは、陸奥国府多賀城に津波が夜に押し寄せ、約千人が溺死したと読み取れる。しかし、多賀城跡城外でこれまで行われた発掘調査ではなかなか貞観津波被害の実態が不明確であった。東日本大震災後に行われた多賀城跡城外の大規模な復興調査により、海生種珪藻を含む9世紀中頃のイベント堆積物の砂層が4箇所発見された。粒度分析では河川由来の洪水堆積物と判明した。珪藻分析では海生種珪藻・汽水種珪藻が含まれ、河川を遡上した貞観地震津波堆積物の可能性が出てきた。これらを合理的に解釈するためには、現生の海生種・汽水種珪藻の遡上限界を確認しておく必要性があるが、こうした研究はこれまで行われていないようであり、基礎的研究が不足しているのが現状であった。 本研究の目的は、陸奥国府多賀城跡への貞観津波の襲来を検証するための基礎データとして、現生の海生種・汽水種珪藻がどの程度河川を遡上するか確認することにある。珪藻研究者とともに、潮位が一年で最も高い春の5月8日大潮日、及び貞観地震発生日と同じ7月14日の若潮日に砂押川河口から多賀城跡近辺流域までの16地点で試料水を採取し、物理・化学的分析(水温、塩分、pH、電気伝導度、透視度)と珪藻分析を行った。 その結果、下記の研究成果があった。 (1)浮遊性海生種珪藻の輸送(遡上)限界は、河口から4 kmである。このことから河口から6 km上流でも検出された陸奥国府多賀城跡城外のイベント堆積物は、津波に由来する可能性が高いと判断される。(2)海水の遡上と浮遊性海生種珪藻の輸送は一致し、海生種珪藻の存在は海水遡上の指標となりうる。これに対し、汽水種珪藻は生育範囲が広く遡上限界の推定や指標には不向きである。(3)海生種珪藻群集は河口から2 kmで淡水群集へと変化する。このことから、河口から2 kmが海生種珪藻の生育限界と推測された。
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Remarks |
柳澤和明2016.3「貞観地震・津波の発生時刻、潮汐の影響と記事の特性に関する一考察」『東北歴史博物館研究紀要』17 、pp.31-42;http://www.thm.pref.miyagi.jp /issue/index.phpで論文PDF公開。貞観地震・津波が夜間に発生したことを論証。
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Research Products
(9 results)