2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13312
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 洋一 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00114596)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 旧東ドイツ / 社会主義 / 社会主義統一党 / 社会的裁判権 / 法制史 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度のため、文献調査を中心に行ない、また2017年3月から4月にベルリンに出張し、図書館、文書館等で、日本で体系的に収集されていない旧東ドイツ時代の実務関係文献および旧東ドイツ社会主義統一党とその関係機関の文書を閲覧検討した。 文献調査としては、いわゆる旧東ドイツを始めとするソ連型社会主義圏における法概念、社会的裁判権、検事総長による裁判判決の再審査等の問題について、最近の研究を検討し、研究状況を確認した。このうち旧東ドイツにおける法概念については、旧東ドイツ体制崩壊後の研究の多くには、抽象的・理論的に法理論、法概念を分析する傾向が見られるが、このような研究方法によっては、法学研究が圧倒的な政治的圧力のもとで行われていた旧東ドイツの法理論の展開を明らかにすることは難しい。国内・国際政治との関連で法学のあり方を分析することが必要である。 その意味でも、1958年4月のいわゆるバーベルスベルク会議が旧東ドイツにおける法学と法概念の理解のために重要である。その前史および後代への影響について、史料を深く分析した研究がないため、ベルリンの連邦文書館に収められている社会主義統一党関係の文書およびポツダム大学文書館に収められている「ドイツ国家・法学アカデミー」関係の文書を研究した。収集した文書は現在分析中であるが、ソヴィエト共産党第20回党大会におけるいわゆる「スターリン批判」が引き金となって、旧東ドイツ法学界でも多様な自由化や開放の動きが出ていたこと、すでに1958年4月の会議以前にアカデミー内部の党組織を通して社会主義統一党がそのような自由化の運動に厳しい批判と制裁を加えていたことが具体的に明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査については、研究開始前から現在のドイツで研究が及んでいる範囲は確認しており、また出張時に面会したドイツ人研究者によっても私の認識に誤りがないことが確認されたため、だいたい予想の範囲の文献を調査することが出来た。 また文書館での史料調査については、旧東ドイツの史料を扱うのが初めてだったので、困難が生ずる可能性もあったが、連邦文書館の資料整理が行き届いていたのでとくに困難もなく史料の検討をすすめることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
バーベルスベルク会議の位置づけの重要性は確認できたので、今後まずこの問題について、原史料にもとづいて検討を加える。その際の大きな問題として、ポツダムの大学図書館所蔵の文書については、十分なカタログ化ができていなかったため、一部のみを包摂するに過ぎない内容別カードで検索し得た限りの文書は閲覧したが、それ以外のものへのアクセスが可能か否かを検討する必要がある。 社会的裁判権については、一方では旧東ドイツ時代に刊行されていた実務のためのハンドブック類を分析することで制度設営者側がこれに期待していた機能と、認識していた問題点を明らかにするとともに、実際の利用頻度等、裁判権としての活動実態についての資料を検討したい。
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Causes of Carryover |
2017年3月~4月に年度を跨ぐ出張を行ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にかかる10日分の旅費として支出する予定である。
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