2017 Fiscal Year Research-status Report
南洋群島の法と司法に関する実証的基盤研究―日本近代法史の再定位を目指して―
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16K13314
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小野 博司 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (70460996)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 南洋群島 / 外地法 / 軍政 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は、1914年8月に第一次世界大戦に参戦し、10月までに海軍はドイツの保護領であった南洋群島(太平洋上のマリアナ、カロリン、マーシャルの各群島に所在する623の島)を占領した。その後南洋群島では、1922年3月まで海軍(南遣支隊、臨時南洋群島防備隊)による統治が行われた。南洋群島の法と司法の実態を明らかにするという「研究の目的」を達成するために、本年度は、この1914年から1922年までの海軍統治期の南洋群島の統治機関、法、裁判について調査を行った。 海軍統治期と、1922年4月以降の南洋庁統治期は断続的に捉えられることも多いが(海軍による統治が「占領統治」であったのに対し、南洋庁による統治は、1919年5月のパリ講和会議における決議に基づく「委任統治」であった。それゆえ日本政府は、満州事変・満州国建国をきっかけに1935年3月に国際連盟を脱退してからも、南洋群島の統治を継続した。)、法制度に関していえば、南洋庁統治期の法は、海軍統治期の法を前提に形成された部分も少なくない。またその担い手である南洋庁職員、とりわけ設置当初の職員についても、長官をはじめとする幹部を含めて、海軍統治期の臨時南洋群島防備隊の民政部や民政署に勤務していた者が多い。 本年度に行った調査により、これまで言及されることのなかった、南遣支隊および臨時南洋群島防備隊の法と司法の内容を一定程度明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本による南洋群島統治は、1914年10月から1922年3月までの海軍統治期と、1922年4月からの南洋庁統治期の二期に大きく分けることができる(海軍統治期は、さらに、南遣支隊統治期と臨時南洋群島防備隊統治期に分けることができる)。本年度は、このうち海軍統治期の法と司法について、国立国会図書館や沖縄県立図書館をはじめとする国内機関に加え、国立パラオ博物館(Belau National Museum)やパラオ最高裁判所(Palau Supreme Court)図書館をはじめとする国外機関において調査を行った。 本年度の成果はすでに原稿にしており、翌年度に法制史学会の創立70周年記念論集(査読付き)に投稿することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度は、主に1922年4月以降の南洋庁統治期の法と司法の実態を明らかにすることを計画している。分析にあたっては、他の外地(台湾、朝鮮)との比較に加え、海軍統治期との関係(連続/断続)を重視する。海外の研究者との意見交換に加え、国立国会図書館や沖縄県立図書館をはじめとする国内機関、そして、北マリアナ諸島歴史文化博物館(Northern Mariana Island Museum of History and Culture)をはじめとする国外機関で資料調査を行い、翌年度中に成果を原稿にまとめることを予定している。
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Causes of Carryover |
書籍の購入費に差額が生じたためであり、翌年度の書籍購入費として使用する。
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