2016 Fiscal Year Research-status Report
バイオ医薬品の知財保護に関する国際比較~バイオ後続品の普及に伴う法的課題の検討
Project/Area Number |
16K13331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桝田 祥子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (70508150)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオ医薬品 / 抗体医薬 / 差止請求権 / 新薬開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、急速に拡大するバイオ医薬品(新薬・後続品)市場の現状に鑑み、従来の低分子医薬品とは異なる新たなバイオ医薬品の知的財産保護の在り方を検討することを目的とする。本年度は、日本、米国、欧州におけるバイオ医薬品に関する新薬知財保護制度の比較調査および具体的事例研究を実施し、また、対照となる低分子医薬品の特許保護の現状についても日米の最近の動向を調査した。 事例研究は、当初、既に特許が切れてバイオ後続品が市場に参入している品目の事例研究を行う予定であったが、この1年の間に、バイオ医薬品の中でも抗体医薬に関し、日米欧において、新薬の当局承認後または臨床開発段階で、他者から特許権侵害訴訟が提起される事例が3例も確認されたため、それらの分析を優先して行うこととした。すでに全世界で和解が成立したペムブロリツマズ(pembrolizumab;小野薬品およびBMS社対メルク社)、米国で控訴審中のエミシズマブ(emicizumab;アムジェン社対サノフィ社)、日本で第一審中のアリロキュマブ(alirocumab;バクスアルタ社対中外製薬)について、それぞれの動向を追跡しつつ検討を行っている。いずれも、低分子医薬品においては殆ど想定され得なかった、新薬開発企業側が特許権侵害訴訟の被告になるケースであり、新薬の販売・普及の遅延を回避するために、特許権の権利行使はどこまで制限されるべきなのか、という視点で取り組むべき新たな論点を見出した。また、抗体医薬では、特許発明のクレームが非常に広範になる傾向にあり、特許要件およびクレーム解釈について様々な論点があり、それらを日米欧で検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、予定した6品目とは別の3品目について先行して検討を行っているが、このまま研究続行することにより、当初の目的は達成できる上、抗体医薬に特徴的な課題についても明らかにすることができると考えている。 低分子医薬品の特許保護の日米比較は、当初予定していなかったが、最近の55品目について成果を得たため、バイオ医薬品についても同様の手法で比較ができるか検討中である。 今後の医薬品産業へのインパクトを予測するために、製薬企業等との意見交換もすでに2度ほど実施しており、今後も随時、研究の進捗とともに行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、日本、米国、欧州におけるバイオ医薬品に関する新薬知財保護制度の比較調査および具体的事例研究を行う。前者については、特に、バイオ医薬品の販売・普及の遅延を回避するために、特許権の権利行使はどこまで制限されるべきなのか、という観点で、差止請求権の制限や強制実施権の設定等について日米欧の制度比較し、また、後者については、引き続き、訴訟動向を踏まえながら、抗体医薬に関する特許発明について権利保護の在り方を検討することを予定している。 研究がある程度まとまった時点で、医薬知財研究会を開催して、結果報告するとともに、産官学の立場での意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度に購入予定であった書籍のうち、年度内の購入を見送ったものがあるため、全体の3%程度の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度早々に、昨年度購入予定であった書籍を購入する。
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Research Products
(1 results)