2016 Fiscal Year Research-status Report
多文化家族を巡る法政策・法制度の構築に向けて―沖縄と済州島との多角的考察から
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16K13336
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
上江洲 純子 沖縄国際大学, 法学部, 准教授 (60389608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 由美 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (00433623)
西山 千絵 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (20633506)
イ ヒョンジョン 沖縄国際大学, 産業情報学部, 教授 (50511169)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジェンダー法 / 多文化家族支援法 / 人権保護 / 多文化共生と言語支援 / ジェンダー経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究実施計画を踏まえて、(1)結婚移住女性やその子ども達が直面する人権問題のほか言語面・経済面からも実証的に問題を解明すること、(2)現行の法政策・法制度の不備を点検すること、に注力した。 (1)については、沖縄県の委託を受けて沖縄県内の定住外国人を対象に実態調査・アンケート調査を行い、多文化共生モデル事業の実施地域となっている宜野湾市への支援を行っている「沖縄NGOセンター」や、文化庁の補助事業も受けながら沖縄県内で定住外国人向けの日本語教室を開催している「IRESCO」において聴き取りを行い、沖縄県内における結婚移住女性やその子ども達の現状を把握することから始めた。加えて、宮古地区においては、予備調査の際の協力者であった結婚移住女性に対して継続調査を実施した。 (2)については、現行の法政策・法制度を確認するため、内閣府定住外国人施策推進室、文化庁文化部国語課、厚生労働省外国人雇用対策課をそれぞれ訪問して、日本における定住外国人政策の全体像を把握することに努め、さらに、結婚移住女性やその子ども達への言語面・経済面の支援メニューの有無について確認した。また、地方公共団体における先進的な取り組みを知るため、愛知県県民生活部社会活動推進課多文化共生推進室、公益財団法人愛知県国際交流協会交流共生課、岐阜県可児市国際交流協会を訪ね、定住外国人の集住地域における生活上、就学上、就労上の課題を知る手掛かりを得た。 さらに、これらの調査の成果や収集した資料・情報の共有化を図るため、合計8回の研究会を開催し、研究代表者・分担者がそれぞれ担当した分野につき個別報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に予定していた調査を概ね実施することができた。 日本における法政策・法制度の全体像の把握や先進事例に関する情報収集も概ね順調に進んでいる。また、沖縄県内で多文化共生推進に中心的な役割を果たしている機関や団体への聴き取りも実施でき、今後の調査におけるこれらの機関等との協力態勢も調えることができた。さらに、離島地域においては調査の対象となる結婚移住女性や彼女達を支える関係機関・関係者との繋がりも維持している。 ただし、予定していた韓国(済州島)での実態調査を実施できなかったことに加え、今年度の成果について詳細な分析を行い、これを取りまとめて公表するところまでは至っておらず、この点は、次年度に重点的に取り組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、異なる研究分野間で連関することで多文化家族が直面する問題を多角的に考察し、それによって法政策・法制度の構築に向けての提言を試みることを目的としているので、今後は、法政策・法制度等の提言に向けて、研究代表者・分担者がそれぞれ、情報・資料の収集に引き続き努めていくとともに、今年度の成果を踏まえながら、現時点における日本の問題点を抽出していく。 これまでに築き上げたネットワークも使いながら離島地域の調査も引き続き行い、調査対象地域や対象者の拡大も視野に入れて追加調査の要否も検討する。さらに今後は、韓国との比較調査にも重点を置き、韓国の「多文化家族支援法」に関連する資料を収集し、検証するほか、韓国(済州島)における多文化家族への言語支援やそれを支える財政的支援の状況に関する実態調査を踏まえて、提言をとりまとめ、その成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
韓国(済州島)における実態調査を実施できなかったため、その分の旅費と調査に関連して発生する予定であった専門的知識の提供者や通訳者への謝金分の支出が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
韓国(済州島)における実態調査を実施するため、次年度は、研究代表者・分担者4人分の旅費とともに、調査先における専門的知識の提供者や通訳者のための謝金による支出が大半を占める予定である。それ以外には、実態調査に係る翻訳料や、調査に係る関連書籍・消耗品の購入に充てることを予定している。
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