2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13342
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土屋 礼子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00275504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 聡明 日本大学, 法学部, 准教授 (00514499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラジオ / メディア / OWI / 米軍 / 心理戦 / 朝鮮語 / 英語 / 中国語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、米国議会図書館から録音盤130ファイル以上を購入し、朝鮮語による放送だけでなく、英語、中国語及び日本語の放送の録音も収集することができ、それらのリストを作成し内容の分析を始めた。 研究成果としては、分担者である小林聡明が「冷戦期アジアの米軍心理戦― 東アジアから東南アジアへの展開と拠点としての沖縄」を韓国冷戦学会で韓国語で発表し、さらに同内容を日本語論文「冷戦期アジアの米軍心理戦-東アジアから東南アジアへの展開と拠点としての沖縄」(『インテリジェンス』早稲田大学20世紀メディア研究所、第17号、2017年3月)として発表した。これは、本研究課題の東アジアにおけるアメリカのプロパガンダに関して「後史」として接続する内容であり、プロパガンダ・ラジオの歴史的展開という長い射程において、OWIのプロパガンダ放送を位置づけることを可能とした。 また、分担者である小林聡明は、「韓国戦争期対韓半島UNラジオと英米協力」を韓国放送学会で韓国語で行い、朝鮮戦争時の国連軍放送の実態を明らかにし、第二次世界大戦時のOWIのプロパガンダ放送との関連を明らかにする手がかりを提示した。 代表者の土屋礼子による論文「占領軍の翻訳通訳局(ATIS)のインテリジェンス活動」(同前『インテリジェンス』17号、2017年3月)は、米軍によるプロパガンダ放送にも影響を与えていたATISの占領期における活動を論じ、OWIの活動の背景を明らかにした。 また分担者である小林聡明は、海外研究動向「韓国のメディア・ジャーナリズム関連研究の動向:2016 年度」(『ジャーナリズム&メディア』日本大学法学部新聞学研究所、2017年3月)をまとめて発表したが、これは本研究課題の対象に含まれる朝鮮語放送の研究意義とその独創性を再確認するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、録音盤を130ファイル以上を購入し、1年目に想定していた以上の成果が得られている。当初はOWI朝鮮語ラジオ放送のみを対象として収集する予定であったが、2年目の前半に予定していた中国語放送と日本語放送の録音盤収集も、一部、先取りして実施することができた。 第二に、OWI組織についての解明が進んでいることである。これまでOWI、とりわけ太平洋局の組織は、十分に明らかにされておらず、どこの部局で、いかにプロパガンダ放送が実施されたのかという基本的な問いは、解明されないままであった。1年目は、米国立公文書館に所蔵されているOWI文書を活用し、OWIの組織構成や指揮命令系統、要員構成を明らかにしつつある。 以上のように、資料と分析の二つの観点から、重要な基盤となる作業が1年目にほぼ予定通りに進行しているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、引き続き録音盤の収集に努めることである。1年目は、中国語と日本語の一部まで収集することができたため、残りの録音盤の収集を2年目の前半に完了させる。 第二に、これら収集した録音盤のリスト化と内容分析をすすめることである。その際、米国立公文書館に所蔵されるOWIの文書史料の分析と同時に進めることが、プロパガンダ放送の分析に立体性を与えることとなる。 第三に、OWIによる朝鮮語、中国語、日本語放送の実態を解明し、言語・対象別の放送の間で、どのような相違点、同質点があったのかを浮き彫りにすることである。それは、OWIが東アジアで実施したプロパガンダ放送の全貌を明らかにする重要なポイントとなる。 以上、三つの課題の解明を通じて得られる成果を、積極的に発表する。具体的には、1年目の成果について、できるだけ早いうちに論文を発表し、残りも2年目の後半に口頭発表や論文の形式にて発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度1月に米国議会図書館にOWIによるプロパガンダ放送の音盤複製ファイルの購入を依頼したが、依頼した量が多く、結果的に今年度予算の残額を超える請求額となった。しかし、議会図書館には一括で購入代金を支払う必要があり、とりあえず研究代表者のクレジットカードでの一括支払いを行い、今年度予算の残額を次年度に回すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由に記したように、次年度に回した残額と新年度の予算を合わせて、研究代表者が仮払いしている、一括購入した音盤の支出にあてる。
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Research Products
(8 results)