2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13343
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 一人 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (60334025)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国連 / 経済制裁 / 核不拡散 / イラン核合意 / 国際秩序 / NPT |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究では、イランに対する国連制裁と米国・EUによる独自制裁を踏まえた、新たな分析枠組みの構築を目指すことを目標に研究を進めてきた。核不拡散に対する制裁の効果やその分析に関しては先行研究が少なく、既存の研究にはない様々な要素を踏まえた分析枠組み構築が必要であった。そこで、他分野で進められた研究を踏まえ、新しい安全保障のあり方がどのように展開されるのか、また米国においてはトランプ政権が発足したことも踏まえ、各国の独自制裁が発動されるメカニズムや政策的な変化にも注目をして研究を進めた。 それらの研究の成果として、まず外務省が監修する『外交』に寄稿した「新しい安全保障と技術管理」論文では、現代の安全保障が伝統的な技術だけでなく、ロボットや人工知能といった新たな技術を含んだものになっているトレンドを明らかにし、その中で安全保障は伝統的な手段だけでなく、技術管理や制裁といった非軍事的な手段も含みうることを明らかにした。また、上述の論文を発展させたものとして、国際問題研究所が発行する『国際問題』に「安全保障の空間的変容」と題した論文を寄稿した。ここでは現代世界における安全保障がサイバーや宇宙といった分野を含めることで空間的に変容し、それらが新たな安全保障の仕組みを必要とすること、その中で技術管理が重要な意味をなし、仮にサイバーや宇宙空間での紛争が起こった場合、それに対抗する措置を検討していかなければならないことを示した。この論文を日本とインドの技術移転に当てはめて検討したのがSpace India 2.0という図書に寄稿した論文である。 また日本国際政治学会では技術管理の問題としてテロ対策の問題を扱い、日本安全保障貿易学会の報告ではトランプ政権が誕生した後のイラン制裁の問題について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成28年度は国連制裁と各国制裁の分析枠組みを検討する作業を進め、それらを複数の論文と学会発表の形で発表することが出来た。まだ分析枠組みを完成する段階には至っていないが、安全保障政策の分析をするための概念整理や理論的枠組み、外国への技術移転とその管理、そして米国におけるトランプ政権の誕生による変化についてきちんとフォローし、それらを形にすることで、今後の研究を進めるための土台が出来たと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究は、金融制裁に関する分析を進めるとともに、北朝鮮制裁の事例を踏まえた検討を進める予定にしている。金融制裁に関しては、イギリスのキングスカレッジで制裁問題を研究しているProject Alphaのメンバーと協力して調査を行うこととしており、日本における金融制裁当局である財務省への聞き取りや、国際的な取引のある銀行への聞き取りを計画している。また、オーストラリア、イギリス、アメリカの金融制裁のあり方を比較対象として含め、共同研究を推進していく。 北朝鮮問題については、現在、北朝鮮の核・ミサイル開発に関連した動きが激しくなっており、制裁の効果を十分見極めることが困難であるが、こうした極限状況はむしろ制裁や技術管理のあり方の特殊な例として検討し、ここから新しい知見が得られるかどうかを検討していく。
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Research Products
(5 results)