2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K13352
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芹澤 成弘 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90252717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 章久 京都大学, 経済研究所, 教授 (00216003)
二神 孝一 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (30199400)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 統計調査 / インパクト・ファクター / Article Influence Score / 学術誌 / 研究評価 / 引用数 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、世界各国は学術的研究力向上に多額の資金を投じており、その効果として研究の生産性を定量的に測定することが重要な課題となっている。学術的研究生産性の代表的な定量的指標として、重要な国際的学術誌への論文掲載数がある。さらに、学術誌の重要度の指標として、インパクト・ファクターやAIS(Article Influence Score)がある。しかし、研究評価の国際基準は基本的に欧米中心に設定されているので、日本の研究、特に文科系の研究を評価する際には、慎重に適用すべきと主張されることがある。 そこで本年度は、日本の経済・社会科学系の主要5国立大学の経済・社会科学系部局とシンガポール国立大学経済学部(NUS)の研究生産性を国際的学術誌への論文掲載数で計測した。日本の経済・社会科学系主要5国立大学の経済・社会科学系部局として、東京大学社会科学研究所、一橋大学経済研究所、京都大学経済研究所、大阪大学社会経済研究所、神戸大学経済経営研究所を調査対象とした。シンガポール国立大学は、Times Higher Education(THE)の大学ランキングでは、アジアトップの大学である。研究評価の国際基準は基本的に欧米中心に設定されているために、日本の大学に不利になる点があるならば、日本以外のアジアの国でも同様と考えられる。そのため、シンガポール国立大学経済学部(NUS)が、同じ評価基準でどのようなperformanceを達成しているかを調査し、日本の経済・社会科学系部局と比較した。 AISをもとに作成した経済学重要学術誌リスト(TOP20、TOP50、TOP100、TO200)と、経済学との隣接分野(経営学、社会学、法学、歴史学、地域研究、統計学など)の学術誌を膨大に含む「拡張リスト」を使い、研究生産性を計測した。さらに、論文数や引用数の総数だけではなく、部局平均や中位値を計測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡張リストは、TOP200に含まれている学術誌205誌に加え、SSCI (Social Sciences Citation Index) でBusiness (121誌)、Business, Finance (96誌)、Management (194誌)、Law (147誌)、Sociology (147誌)、History (87誌)、History of Social Sciences (35誌)、Political Science (165誌)、Industrial Relations & Labor (27誌)、Area Studies (69誌)、International Relations(86誌)、Urban Studies (38誌)、およびSCI (Sciences Citation Index) のOperation Research & Management Sciences (83誌)、Statistics & Probability (124誌)に分類されている学術誌全てを含んでいる。このように非常に多くの学術誌から日本の5部局に所属する研究者(合計129人)に加えシンガポール国立大学経済学部の研究者(57人)の論文掲載データを抽出することは非常に手間のかかる作業であるが、かなり正確に抽出できた。 平成29年12月4日の日本経済新聞記事、「組織管理改革に遅れ 国立大の研究力低下」(河村小百合)の基になった論文、「成長戦略として国立大学法人制度に求められる抜本的改革の方向性」(河村小百合、JRIレビュー、日本総研)では、本研究の平成28年度の成果(ISER Discussion Paper, No. 998, April 2017)を約2ページにわたって引用している。本研究の成果が日本の研究の将来を議論する上で重要な役割を果たしている証左である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に日本を代表する9大学の合計14部局の研究生産性を測定したので、平成29年度には、国際的な大学ランキングで、アジアトップの位置にあるシンガポール国立大学経済学部を調査した。しかし、海外の大学のデータを集めるには、非常に労力と時間がかかった。例えば、日本の大学の研究者で同姓同名は少ないが、海外の大学では頻繁にいる。そのため、データベースで検索した際に、対象研究者と同姓同名の多くの研究者の研究業績がヒットする。その中から、対象研究者の研究業績だけを絞り込む作業は、非常に手間がかかる作業であった。 平成28年度の国内の調査では重要な国際的学術誌への論文掲載数と被引用数の両方を指標として研究生産性を測定したが、上述の理由により本年度は被引用数の調査を割愛せざるをえなかった。平成30年度には、被引用数についても調査する予定である。また、シンガポール国立大学経済学部と同様に国際的な大学ランキングで、アジアトップの位置にある香港大学経済学部の調査にも挑戦したいと考えている。このように、日本の大学の研究生産性を測定するために、より豊富かつ包括的なデータに基づいて、国際比較を行う予定である。 研究評価の国際基準は基本的に欧米中心に設定されているために、日本の大学に不利になる点があるならば、日本以外のアジアの国でも同様と考えられる。ところが、シンガポール国立大学経済学部や香港大学経済学部は、研究の国際評価基準で欧米の一流大学と並ぶような評価を得ている。そのような大学を調査することによって、日本の大学の国際化のための有益な情報が得られると見込まれる。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度は、国内の大学だけではなく、シンガポール国立大学経済学部を調査対象に追加した。そのため、【④今後の研究の推進方策】で説明したとおり、従来よりも非常に多くの時間がかかった。平成28年度は、国際的学術誌への論文掲載数と被引用数の両方を指標として研究生産性を測定したが、本年度は被引用数の調査を割愛せざるをえなかった。 本研究では、被引用数の調査時にデータベースWeb of Scienceの「引用文献検索」を使っている。この検索ではごく最近の文献以外はフルネームで検索することができず、Last nameとFirst nameのイニシャル、First name とLast Nameのイニシャルといった組み合わせでしか検索できない。そのため、一人の研究者を検索すると数万件ヒットしてしまうことが頻繁にある。その中から、対象研究者の研究業績だけを絞り込む作業は、学術誌への論文掲載数の調査よりもさらに手間がかかる作業である。 平成30年度は平成29年度に割愛した被引用数の調査を計画しているが、学術誌への論文掲載数の調査よりもはるかに手間と時間がかかるため、その膨大な作業を行う経費を確保するために、今年度予算の一部を平成30年度に移した。 (使用計画)平成29年度経費から平成30年度に残す予算を、シンガポール国立大学経済学部の研究者の被引用数を調査するための経費として支出する予定である。
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