2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13359
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
池田 真介 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (90598567)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自殺 / 動学パネル / オプション理論 / ジニ係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の前身である若手(B)課題番号24730203で始めた自殺のオプション理論の構築が完成し、学術論文に投稿する準備が整った。同論文では、賃金、人的資本、および富が、ある理想的な値(「理想値」)を下回る場合にいつでも行使できる権利として自殺を記述した。次に、日本の自殺率急上昇直前である1996年の金融・労働市場を要約するパラメーターを特定化し、モデルが生み出す自殺率と実際の自殺率が整合するよう理想値をカリブレートした。自殺率上昇と平均賃金下落が起こった1998年のパラメーターを用いた自殺率理論値は、1996年比で現実同様に上昇し、またその上昇分は実際の上昇分の40%以上を説明できた。
また、「自殺の二次医療圏データの計量経済分析」で自殺の市区町村別地域パネルデータを構築した際に除外した、消費・貯蓄・負債の市区町村別の階級データを利用する目途が立った。階級データからジニ係数を取り出す手法として、Shorrocks and Wan (2008), United Nations University No.2008/16、が有力であることが明らかになった。さらに、ジニ係数を説明変数として用いる場合にはgenerated regressorであることに注意を払う必要が判明した。一般理論のMammen, Roth and Schienle (2012), Annals of Statistics、を参考に、両者の接合を試みている。
最後に、パネル分位点回帰については、Powell (2016), Quantile Regression with Non-Additive Fixed Effects, working paper、が、Galvao (2001) Journal of Econometricsより自然なアプローチを提示した。このため、前者の動学的な拡張を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自殺のオプション理論構築作業が大きく前進したことは朗報である。また、計量経済学の理論の進展も順調に推移している。特にGalvao流の動学パネル回帰分析の根本的な問題点を回避する可能性をPowellが示唆したことで、より自然なアプローチに基づき計量理論を展開できるめどが立った。他方、申請書で記した市区町村レベルでの財政・福祉支出や災害に関するデータの収集は遅れている。よって、課題の進捗状況は、総合的には順調であると考えられるが、個別の課題についてはより速い部分も遅い部分もある。
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Strategy for Future Research Activity |
動学パネル分位点回帰は理論・応用上重要であり、世界の計量経済学者による研究競争が考えられるため、できるだけ早く理論を完成して発表したい。さらに、階級データからのジニ係数の抽出は共同研究者(Yan Zhang, Asian Development Bank Institute)が知見・経験を持っているので、共同作業を提案し、研究の進展を加速させたい。
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Causes of Carryover |
データ収集作業として大学院生のアルバイトの雇用を想定していたが思うような人材が見つけられなかった。また、研究発表の為の学会参加の機会も逃してしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続きデータ収集作業に携わる学生アルバイトを探したい。大学院生にこだわらず、優秀であるならば他大の学部生からも募集してみたい。また、より積極的に研究発表を行いたい。
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