2017 Fiscal Year Research-status Report
空間経済における秩序形成:新しい理論と実証分析手法の構築
Project/Area Number |
16K13360
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 知也 京都大学, 経済研究所, 教授 (70283679)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経済集積 / 都市システム / 大型計算機 / 並列計算 / 秩序形成 / フラクタル / 冪乗則 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに最適化した並列計算プログラムを用いて、2地域・1産業モデルであったPflueger (2004)によるモデルを多地域・多産業に拡張した理論モデルを用い、 大型計算機を用いて昨年度までに基本パラメタ設定下で安定均衡のブートストラップサンプルの蓄積を終えた。具体的には、均衡における都市の規模・空間配置を特徴づける経済の産業構造は, Broda and Weinstein (2006)が米国データから推定した, 製造13,930品目の代替弾力性の分布を用いて、そこから無作為に抽出した品目群により仮想経済の産業構造を決め, その下で, 無作為に与えた人口の地域・産業間分布から自己組織的に均衡を得る試行を繰り返した。最終年に産業・人口集積の秩序形成に関する理論解析を行い基本的な結果を得るに十分な、均衡標本を得ることができた。現在、頑健性の検証のための標本蓄積を続けながら、基本的な数値解析の準備段階に入っている。 一方で、日・米・欧州・中国・インドの1kmメッシュ人口統計データを用いて、上述の理論分析に対応する実証分析のデータ収集を進め、日・米・欧州についてはデータを整理し、基礎的な分析を進め、理論モデルと同様の、人口集積の秩序形成を確認した。特に、日米では1極、欧州では2極の都市システムとして、空間的なフラクタル構造を持ち、個々のサブシステムにおける、都市規模分布がほぼ共通の冪乗則に従うことが確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2次元の立地空間の解析も含む予定であったが、1次元立地空間でも解析に予想以上の計算時間を要することが判明し、研究は1次元空間に特化することとした点で、当初の計画と異なるが、例えば実データが示す集積の秩序形成について、質的には1次元空間から得られる理論結果で説明が可能であり、本質的な問題にはならない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに蓄積した安定均衡標本を用いて理論解析を進める。具体的には、経済集積に、都市規模分布の冪乗則を含む空間的なフラクタル構造が発現し、個々の地域単位は貿易経済圏として特徴づけられることを示す。合わせて、日・米・欧州・中国・インドの人口空間分布データを用いて、実経済でも理論と同様な秩序形成が起こっている事実を示す。 本研究で示す秩序は、多数の規模の経済の程度が異なる産業が、それに応じて異なる空間周期で集積し、更に、集積が空間的に同期することにより発現する。このような秩序形成は、空間・産業を十分に非集計して初めて再現・観察できる現象であり、その理論分析には、大型計算機を積極的に用いた系統的な理論解析が必要になることを議論する。
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Causes of Carryover |
数値解析用のブートストラップ標本の蓄積に時間を擁し、次年度にも引き続き予算を確保する必要性が生じたため。
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Research Products
(3 results)