2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13369
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 大司 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80346139)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 泉 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (30712236)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 医療経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は飲酒が所得や学力形成に与える因果的影響を推定する。既存研究は適度な飲酒が健康状態や所得に好影響を与えることを明らかにしてきたが、体質による飲酒効果の異質性に十分に注意を払ってきたとは言い難い。本研究は酒を飲める体質と酒を飲めない体質のものがいる東アジア人の特性に着目し、酒を飲める体質か否かをアルコールパッチテストで識別し、飲酒が結果変数に与える影響を推定する。 飲酒によってアルコールが体内に取り込まれると、それは肝臓でアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解される。アセトアルデヒドはさらにアセトアルデヒド脱水素酵素により酢酸に分解され、それが水、二酸化炭素に分解されることで体外に排出されるが、東アジア人にはアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い体質のものがおり、毒性のあるアセトアルデヒドが体内に残留することによって顔が赤くなるなどの反応が起こる。これまでにアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い体質のものがアルコール摂取をすることは健康に悪影響を与える可能性を指摘する医学研究は存在するが、所得などに与える影響は知られていない。そこで本研究ではアルコール摂取が所得などに与える影響を体質ごとに明らかにすることを目的としている。 平成28年度には韓国におけるデータ収集を行った。韓国調査会社に依頼し、アルコールパッチを配布し、飲酒に関する体質に関する情報とともに就業並びに賃金に関する情報を収集した。今後このデータの分析を進め、研究分担者が取得した日本のデータとの比較も通じて研究目的を達成する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には韓国においてアルコールパッチを配布しサーベイを実施した。アルコールパッチを製造しているメーカーの協力、韓国のサーベイ会社の効率的な調査実施などの要因によって効率的に研究が進んだ。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には作成したデータの分析を進める。分担研究者がすでに作成した日本のデータと合わせて分析し、論文を執筆する。日本経済学会など国内外の学会において論文発表を行い、フィードバックを得たうえで論文を改訂し、国際査読誌に投稿をする。
|
Causes of Carryover |
平成28年度に、飲酒が健康状態・就業状態・賃金・学力形成に与える因果的影響を推定するため韓国においてアルコールパッチを配布しサーベイを実施した。アルコールパッチを製造しているメーカーの協力もあり、サーベイの費用が当初の見込みより安価に実施できたため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度に実施した韓国での調査の分析をより詳細に検討する。関連分野の既存の研究を整理し、本研究で得られてた結果と比較分析し論文を完成させる。平成29年度の研究費は論文を完成させるにあたり必要な英文校閲費や国内学会発表旅費などに使用する。
|
Research Products
(15 results)