2016 Fiscal Year Research-status Report
発達心理学の知見を取り入れた家庭内教育の経済理論のパラダイム転換
Project/Area Number |
16K13372
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
赤林 英夫 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90296731)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育の経済学 / 家族の経済学 / 発達心理学 / 愛着 / 人的資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初平成27年12月に予定していたシカゴ大学のヘックマン氏の研究室訪問は、研究代表者の急病等により延期され、平成28年4月に9日間の滞在となった。そこでは、研究代表者の構想する愛着行動(Attachment)の動学モデルの骨格を発表し、ヘックマン氏を始めとする研究室のメンバーと密接に意見交換を行う機会を得た。 Attachment は、実証的には、Separation anxiety で示される。すなわち、乳幼児は、主たる養育者(特に母親)が視野から離れて、見知らぬ人が入ってくると、不安の表情を見せたり泣いたりする。しかし、Secure attachment が確立していると、怒ったり泣き続けたりはせずに、安心してもとに戻る。その場合、養育者はSecure base (安全基地)としての地位を確立しており、健全な愛着が成立していると考えられる。 現在は、Secure baseの確立を、ある種の資本の成長として動学モデルの中に組み込む作業を行い、その成長パターンにおいて、発達心理学におけるエビデンスを再現できるように試みている。 実証分析においては、大学院生とともに、英国のMillennium Cohort Surveyの中に含まれる親子の相互作業、愛着行動に関する変数を抽出し、分析方法の検討を進めている。現在、"Child-Parent Relationship - Pianta (Short Form)"と呼ばれる質問項目群があり、その中に、愛着行動の計測として利用される項目が含まれていることを確認している。本研究ではこの項目を利用して分析を行うことを検討中である。 また、関連して継続して研究を実施している、日本の幼児教育の収益率の推計は、日本の学会(2カ所)で報告し、海外での報告(1カ所)を平成29年度に予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初平成27年12月に予定していたシカゴ大学のヘックマン氏の研究室訪問は、研究代表者の急な病気と入院により延期され、本来終了するはずの他の研究テーマも計画通り終了することができなかった。そのため、シカゴ大学訪問は平成28年4月に延期され、他の研究テーマも引き続き実施することになったため、研究の進行はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、愛着行動のモデル化を進め、英国のデータを利用して推計を試みる。また幼児教育の収益率の推計は、本年度中にディスカッションペーパーとして公表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の急病があったことから、全体の計画がやや遅れているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年実施できなかった招聘を実施して、現在の研究テーマに関する情報交換を行いたい。
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