2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13373
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中室 牧子 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (20598403)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 保育環境の質 / 追跡調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、関東の30の中規模・小規模の認可保育園で、保育環境の「質」を定量的に評価し、保育の質に関わる諸要因(保育環境、担当保育士の保育士資格取得に至る学歴および保育士歴、園規模、子ども対保育士比)と子どもの発育状況との関連を検討した。小規模保育園および中規模保育園の保育環境を定量的に評価し、保育の質に関わる諸要因(保育環境、担当保育士の学歴および保育士歴、園規模、子ども対保育士比)と1歳児クラス在籍児の発育状況との関連を検討した。保育の質研究において国際的に広く利用される保育環境評価スケール(Infant and Toddler Environment Rating Scale-Revised; ITERS-R, Harms, Cryer, & Clifford, 2003, 埋橋玲子訳, 2009)を用い、保育園に実地調査として入り、小規模保育園および中規模保育園の1歳児クラスにおける保育環境を評価し比較した。その結果、全般的には小規模保育園の方が中規模保育園よりも保育環境の質が良好であることが示された。また、保育環境の良さと担当保育士の保育士歴の長さは、1歳児学年末における子どもの発育状況に有意な正の関連をすることが示された。保育園の規模や子ども対保育士比、担当保育士の保育士資格取得に至る教育歴は、子どもの発育状況と有意な関連は認められなかった。本研究の結果は、「良質な保育が子どもの適応的な発達と関連する」という海外の研究成果と一致するものである。この研究を踏まえて、今後は長期的に縦断的調査研究を行う必要があることが明らかとなり、16年度中に埼玉県和光市と話し合いを進め、17年度からは同市の認可保育園(公設公営の2園を除く)全園の1,3,5歳児を対象とした調査を進めていくことで合意したところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年は関東圏の認可保育園を対象とした調査を行い、その調査結果をRIETI(経済産業研究所)のDiscussion Paperとして公表した。しかし、この調査では、調査への参加保育園はいわゆるスノーボール方式で集められ、その結果公立園や無認可園が含まれていないなど、サンプルの特性や対象児の年齢(1歳児)について偏りがある。また、転園や卒園した後の追跡ができないなどの問題があり、保育の質の長期的な効果について計測することができないという問題が発覚したため、来年度は自治体と協力して、自治体の認可保育園を全て調査対象とすることで上記の問題を克服する。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は自治体と協力し、自治体の認可保育園を全て調査対象とすることで調査を拡張する。また、埼玉県が実施している学力調査の公募研究に応募し、保育の質と、将来的な子供たちの認知能力との関係についても分析することができるような枠組みを作っていく。
|
Causes of Carryover |
2017年度に実施する埼玉県和光市での調査計画により多くの資金を振り分けるほうが、サンプル数、代表性、追跡調査が可能であるなどの観点から、研究の精度が高くなると考えたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に実施した調査を、2017年度は和光市全体に拡張して実施する。
|