2016 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical Formulation of a Multilateral Netting Scheme and Its Application
Project/Area Number |
16K13375
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
家富 洋 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20168090)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 努 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90313444)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 多者間ネッティング / 債権債務関係 / 金融決済システム / 変分原理 / ループ電流法 / ヘルムホルツ分解 / 貿易収支 / 三角貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネッティングは,取引金額を圧縮し,金融システムに効率化・安定化をもたらす。取引の電子化やグローバル化により,今後,ネッティングは2者間から多者間へ急速に発展していくと予想される。本研究は,多者間ネッティングに対する数理的基盤を構築し,その応用や法的整備に向けての地固めを行うことを目的としている。
本年度は「決済差額最小化原理」を導入し,多者間ネッティングにおける債権債務の相殺処理方法を数理的に明瞭化した。この変分問題は,与えられた電源,抵抗の下で各素子に流れる電流を求める回路の問題(ジュール発熱最小化原理)と定式化において共通する部分があり,回路問題の1解法であるループ電流法を利用することができる。変分原理の目的関数として「関与する全取引の決済差額の2乗和」を採用すれば,債権債務の流れ構造は,ポテンシャル流とループ流に一意的に分解される(ベクトル解析におけるヘルムホルツ分解に対応)。ポテンシャル流とは各リンク上の流れが両端のノードに付随するポテンシャルの差で与えられる流れであり,ループ流とは各ノードにおいて入出流がバランスしている流れである。つまり,ポテンシャル流がネッティング後の債権債務関係,ループ流がネッティングによる債権債務の精算を表す。さらに,相互信用関係を表す因子(電気回路における抵抗値に対応)を導入しても変分原理を使った定式化が同様に行えることを確かめた。
多者間ネッティングの応用の1つとして,貿易収支関係に着目した。貿易のグローバル化により,貿易不均衡の問題を2国間ではなく,多国間で捉える視点が必要となっている。その一番簡単な例が三角貿易である。2国間では貿易不均衡が生じていても,見方を拡大し,貿易収支を三角関係として捉えれば,3国は貿易によって互恵関係にある。まず手始めに,そのような三角貿易関係をIMFによって提供されている貿易データに基づき具体的に抽出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,当初のほぼ計画通りに進行中である。加えて,金融における決済システムばかりではなく,世界における貿易収支関係,企業間取引関係,企業同士の株式所有関係など多者間ネッティング理論の応用先について新しい着眼点を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
得られた決済差額最小化原理に基づくマルチラテラル・ネッティング方式の応用の可能性を広げるためには,大規模ネットワーク(100万オーダーの参加者を想定)に対しても高速にネッティング計算を実行できることが望ましい。そのために,並列計算アルゴリズムやネットワークのコミュニティ検出手法を活用する。
また,実務への応用に向けて本研究の新ネッティング方式を修正する可能性についても追求する。特に,関与する全取引の決済差額の2乗和(L2ノルム)に関する最小原理を全取引の決済差額の絶対値和(L1ノルム)に関する最小原理で置き替えることを検討する。数理的取り扱いの面では,2乗和に比べて絶対値和の方が格段に難しくなる。他方,絶対値和の方がネッティング参加者の理解が得られ易い側面がある。
加えて,本研究で開発するマルチラテラル・ネッティングの新方式とその応用について基本特許の申請を目指す。
|
Causes of Carryover |
2017年3月に開催された国際会議で研究成果報告を予定していたが,年度末で多忙のため断念し,今年度に開催される国際会議(2017年6月)での発表に切り替えたことが主たる理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費(300千円): 解析用パーソナルコンピューター及びデータ保存用ハードディスク,海外旅費(800千円): 国際会議への参加,国内旅費(131千円): 研究打ち合わせ及び国内学会での研究成果発表,人件費・謝金(100千円): 研究支援者への礼金,その他(100千円): 論文の英文校正。
|
Research Products
(3 results)