2016 Fiscal Year Research-status Report
サイコグラフィック変数を用いた近代商社マンの職務分析
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16K13378
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
若林 幸男 明治大学, 商学部, 専任教授 (60328961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋谷 紀男 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (00202549) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 総合商社の人材 / 羊毛バイヤー / 戦前期三井物産の在豪拠点 / 心性の分析 / 昇給とボーナス額 / ジョブラダー / キャリアパス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最大の目的は現在の学界におけるホワイトカラー人事制度史研究の主な潮流である「定量的分析」だけでは欠け落ちる論点を補足すべく、職務特性や職場環境など職員の「心性」に影響する諸因子の「変数化」によって「定量・定性的分析」による解析モデルを提示することである。 この目的を達成するために、豪州国立公文書館(NAA)において発見した「三井物産シドニー支店長デスク史料」(SP1101/1-MBK及びSP1098/1-MBKのシリーズ)を主に用いながら、戦前期における三井物産の在豪拠点、シドニー、メルボルンにおける羊毛バイヤーのキャリアパス、ジョブラダーについての職務分析を展開し、そこに羊毛のスペシャリストとして赴任した職員の「心性」を表現する諸データを営業マンとしてはゼネラリストとしての扱いにある雑貨掛と比較している。 このモデルとして設定した羊毛バイヤー、青木繁二郎(仮名)のキャリアパスについて、入社時から1945年までデータ化し、その月給額とボーナス額の推移をゼネラリストのモデルとした人物と対比する作業を展開している。特に青木の転任についての支店長への要望書など多くの文書をデータ入力しており、これらのデータを解析することで、戦前の商社の営業マンを取り巻く環境を論理的に設定する作業を展開したい。 青木の転任要望書に記載されている本人の気持ちだけではなく、入手済みの青木に関する人事データの全てからも彼を取り巻く職場環境、職務の特性を総合的に判断し、豪州における羊毛バイヤーの置かれた状況を描き、論稿としてブラッシュアップしていくこととしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに一部本研究予算を使用した学術雑誌ヘの投稿論文を以下のように作成し、掲載が決定している。 若林単著「戦間期三井物産職員の定期昇給とボーナス決定のメカニズム」『社会経済史学』社会経済史学会、次号掲載確定。 若林・秋谷紀男共著「在在外資料館所蔵史料による戦間期在豪日本商社の組織編成に対する比較分析」『明治大学社会科学研究所紀要』明治大学、次号掲載確定。 両論稿とも調査データの処理や、査読者とのやり取りのなか、論稿の精緻化などに本予算を使用した貴重な成果である。ただし、共同研究者の秋谷紀男先生(明治大学政経学部教授)が本年1月31日にご逝去し、豪州調査の主要スタッフが失われ、本プロジェクトは危機的状況に直面した。急きょ連携研究者と今後の研究活動について調整を行った結果、多くの連携研究者が本プロジェクトへの協力を申し出ていただき、豪州国立公文書館(NAA)での収集史料の整理を一緒に行っている。三井物産でモデル化した青木に対比するための高島屋飯田の岡島氏の史料については秋谷教授の生前に既収集分のデータを最大限利用するような使用方法を考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように研究初年度におけるアクシデントを克服し、計画時のペースを取り戻すため、以下のような今後の研究推進を図るつもりである。 第一に豪州調査をいったん中止し、豪州国立公文書館(NAA)所蔵史料が日本の国立公文書館へ移管された後、本格的調査を再開する予定である。その代り、各地の商業学校卒業生の進路についての史料収集を本格化させる。手始めに本年度においては台湾高等商業学校の史料について台湾国立図書館への調査を行う予定である。この調査には本研究の連携研究者および他の研究費による研究者と同行し、撮影等の分担を行うことで調査効率を向上させるつもりである。 第二に収集済みのデータについて、その出力、ハードコピー等を急ぐ。この目的のため、本研究費により単純作業を中心とするアルバイトを活用する予定である。 これらの進捗をまって、8月中、経営史学会の海外発信のための刊行物、Japanese Year Book on Bisiness Historyへの投稿論文の作成、そして8月末以降、収集データの集計、加工を行い、冬に向けて学術論文、「戦前期三井物産豪州支店羊毛バイヤーの人事に対する分析」の作成に入りたい。
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Causes of Carryover |
前述のように豪州国立公文書館(NAA)シドニー分館における調査を主導する共同研究者、秋谷教授のご逝去により、本調査予定が実施できなかった点が最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述のように、豪州調査予定を台湾国立図書館への調査に振りかえ、本夏、調査チームを組成し、実施する予定である。これにより収集したデータについては、アルバイトなどによってハードコピー化し、データの入力作業に入る。これら一連の調査・作業によって次年度使用額はほとんど消化される予定である。
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Research Products
(3 results)